目標に希望と熱意を込めて語るリーダーシップについて。

役所では、組織運営に関して様々な制度や仕組みが導入されるようになりました。政策には「事業目標」が、職員には「個人目標」が、そして、職場には「組織目標」が用意されていますが、目標をペーパーに書いて示すだけでは、職員は目標に書いていることだけをこなすだけの、やらされ仕事をするようになってしまいます。

どの目標にも、共通してめざす地域の将来像があり、目標を達成した先には得られるだろう住民の満足があります。職員は、それを想像して、どれだけワクワクする期待や希望を感じているでしょうか。また、将来像を実現するためには、多様な主体に対して役所が担う役割があり、役所でなければ果たせない使命があります。職員は、このことにどれだけ熱意を持って取り組めているでしょうか。

職員の仕事に対するやりがいは、目標の先にある目的や意義を、課長が自分の言葉で語り、希望や熱意を伝えていくことから生まれます。

 

一人ひとりの成長を後押しするスポンサーシップについて。

地方公務員法が改正され、すべての自治体に人事評価制度が導入されるようになりますが、評価をすれば成長するというものではありません。職員の成長には、実態をしっかり見て、個々人の強みと弱みをすべて事実として受けとめる上司と部下の関係が必要です。

Before → Afterの変化を得るには、現状(Before)をあるがままに認め合うことが出発点となります。

それには、今年度の仕事をしている側面だけではなく、自身の人となりや過去の経験から、今後めざしていることや、やってみたいことなど、素の自分自身を語り合う“ジブンガタリ”の場づくりが役立ちます。課長が肩書を外して、一人の人生の先輩として向き合い、部下の話をよく聴き、ときには課長の弱みを見せて部下に相談してみることを通じて、部下が自分自身をみつめ、今後の自分の目標(After)を見出す力が培われてきます。

また、このようにして部下を理解していると、本人が実現したいことに対して前もって関係者に協力をとりつける働きかけをしたり、成し遂げたことを対外的に発表する機会を用意するなど、間接的に育成を支援することも可能となります。

 

互いに助け合えるチームを築いていくコーディネートについて。

人も財源も少なくなった行政職場においては、職員は自分の担当業務をこなすだけで精一杯のところがあります。それでも、地域の課題はどんどん深刻化して、目標達成度がシビアに評価されていて、成果を高めていかなければなりません。それには、部下の特性を掛け合わせる協力関係を築くことによって、1+1が3以上になるようなチームとしての突破力をつくっていく必要があります。

課長が、職場内の関係づくりのベースとして、日ごろから気軽に話しやすい場を設けたり、事業の進捗状況についてデータ系の情報だけでなく、現場で五感を通じて得られる情報を共有する機会を設けることによって、職員どうしの距離感は縮まります。

また、職員が壁にぶち当たっているときには、原因を問いかけ、必要に応じて多様な人の意見や情報を集めれば、問題の全体像と課題の本質がつかめるようになります。

そこから課題解決の方向性を見極め、責任者を明確にして、新しい価値創造のために組織を越えた横断チームで取り組むと、全体の実行力が高まります。

課長は、職場のトップとして、業務の進行を管理するだけでなく、前に出て牽引することや、ときには後ろに回って後押し、また、ときには職員どうしをつなぎあわせる機能を果たすことが、組織全体の能力と発揮する力を高め、成果を最大化していくことにつながってくるのです。