『超階層ネットワーク』とは

『超階層ネットワーク』とは何でしょうか?

簡単に言うと、「階層を超えた人と人とのつながり」です。たとえば、経営者・部長層のキーマン・課長層のキーマン・一般層のキーマンが会社を良くするために常に相談しあっているようなつながりです。

こういったネットワークが社内に形成されると、変化のためのいいアイデアや動きが生まれてきます。それぞれの立場で、見えている風景や感じ方、協力してもらいやすい人脈などが全然違いますから、その「違い」の中で目的・目標を一にして話していくと、自分と同じ立場の人たちだけでは考えつかなかったようなアイデアが生まれてきます。

会社の動きを鈍くする「階層」の壁

通常、会社全体の動きをぎこちなくさせているのが、「階層」間の認識の違いです。同じ人でも、昇進などによって立場が変わっただけでその言動ががらりと変わる人もいるくらい、「階層」というものは人の見方や認識というものに影響を与えます。

上位層の人は、その「階層」間の認識の違いを埋めようと、訓話や教育で徹底することがあります。「経営者視点でモノを考えろ」とかトップの方が再三言っているケースは、自分の見方・認識をわからせようとする現れです。

「階層」ごとに認識の違いがあるのは当然で、逆にその違いをうまくつかっていこうというのが、『超階層ネットワーク』です。
一般社員は一般社員の感じ方、管理職は管理職の感じ方、経営陣は経営陣なりの感じ方があります。それをお互い責めあうことなく、素直に出していきながら、仕事のやり方を考えていけるようになると、そこから「階層」を超えた協力体制が築かれていきます。

『超階層ネットワーク』での会話

たとえば、『超階層ネットワーク』のミーティングでは、こんな会話がなされます。

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世話人A(課長代理クラス):「私たちの活動に対する認識が多くの社内の人たちにありません。だから、改めて社長から、この活動の目的を全員に発信していただけませんか?」

社長:「やっているつもりなんだけどなあ。」

世話人A(課長代理クラス):「社長は風土改革とはよくおっしゃっていますが、それが何を目指すための活動なのかが伝わっていないんです。社長がこれを通じて、実現したい組織の姿などをメッセージとして出してください。そうすると、よりこの活動の意味合いが伝わると思うんです。」

社長「わかった。来月、年度の方針発表会もあるから、その時にも時間を割いてきちんと話すことにする。」

世話人B(課長クラス)「あと、部長クラスのこの活動に対する認識もマチマチだからなあ。うちの部長はどうもはっきりは言わないが反対のように感じる。」

C部長:「部長クラスは正直言ってまだ認識がバラバラ。そこは私が音頭をとって、定期的にミーティングを開いていくので、そこで認識合わせができればと思っている。ちょっと時間がかかるかもしれんが、やっていくつもりだ。時には若手がどんなことを考えているか、その場でぶつけてもらうのを頼むかもしれないからよろしくね。」

世話人C(若手)「そこは若手で話しておきますね。まだ今の状態じゃあ、怖くて意見言えないですけど。」

C部長:「部長連中は結構若手が元気ないことに対する問題意識は持っているから、意外と聴きたいかもしれないよ。まあ、そのタイミングは状況を見ながら考えるから。」

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みなさんの会社にはこんな「階層」を超えたキーマン同士の相談やお互い頼りあう会話があるでしょうか?

「権力による支配」から「相互尊重による相談関係」へ

有無を言わせない「権力」を使って社員と接している度合いが多い社長のもとでは、こういった「階層」を超えた相談関係はできにくいものです。

なぜなら、「階層」を超えたネットワークは、「権力を使って下を支配する上下関係」とは対極にある「お互いの立場を尊重しあう」関係性の上で成り立つからです。

社長の有無を言わせない、「権力」を使って無理に認識を合わせようとする行為は、下の方からすると「自分の感じているものを無視して、人の感覚に従わなければならないのか」と思ってしまいます。そこに「サラリーマンだからしょうがない」などとつぶやきつつ従順になりすぎると、自分自身が感じる力が落ちてしまい、上から言われたことの指示待ちでしか動かない社員となっていくのです。

社長自身が、もっと上から下までみんなが協力し合う会社にしたいのであれば、あるいはまた、会社内を顧みて社内に『超階層ネットワーク』が見当たらない場合、社長および会社自身の「権力」に頼る仕事の姿勢を見直す必要があるかもしれません。