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「もったいない!」

日本語の「もったいない」という言葉が、“Mottainai”という世界の共通用語として広がっています。
だからということでもありませんが、最近、いろいろな企業にお伺いするたびに、「もったいない!」とつくづく思うことが多くあります。

ある大手メーカーの研究所の方々とミーティングをしていたときの話です。「日々忙しくて、じっくり自分で考えることができるのは平日の夜と土・日だけ。これじゃまずいとは思ってるんだけどね」という意見に、皆さんが「そうだよね…」と言いながら、あきらめと仕方がないといった表情。研究以外の何が忙しいのか伺うと、上層部への進捗報告や資料作成、他部門との連絡会議や研究設備予算の申請事務などに時間がかかるとおっしゃるのです。
皆さん、錚々たる大学の博士や修士課程を卒業してきた方々ばかり。そういう人たちがほとんど「自分の頭を使って新しいことを考える」ということをしていない、また、させていないというのがその研究所の現実だったのです。

仕事の背景や目的が伝えられないまま、指示だけが降ってくる。余計なことを考えずに、とにかく目先の業務をこなすことが優先される。硬直化した組織の中で新しいことをやると、目に見えない牽制と抑止力が働く…などなど。方針や情報をしっかり共有し、権限を委譲すれば、自分でいろいろ考え、アイデアを出し、自ら積極的に行動できる力をもった優秀な人材がたくさんいる企業の中でさえ、こういう現実に遭遇することがなんと多いことか!

組織や企業活動のエネルギーと新たな知を生み出す源泉は「人」

組織や企業活動のエネルギーと新たな知を生み出す源泉は「人」でしかありえません。また、「人」は主体性を発揮し、内発的な動機にもとづいて行動するときにこそ最もエネルギーに溢れ、能力と知恵を出しやすくなります。
組織とは本来、そうした個々の「人」がもつ内発的なエネルギーと知を束ね、増幅させて出力規模を極大化していくためのシステムということができます。
したがって、個人個人のもっている力を1とすると、組織というシステムの中では1+1=2以上の3であったり、4にならなくてはいけないはずなのですが、現実にはどうみても2にもなってないケースが多い。
大量にハイオクガソリンは食うものの、燃費が異常に悪いエンジンで動いているような企業がやけに目につくのです。

「もったいないっ!こんな状態が続けば、日本の企業はどんどん競争力を失っていく!!」そんな危機感が強まるばかりです。

この状態を変えるためには、まずマネジメントや仕事の仕方を「内発的なエネルギーや知を生かす」という視点で根本的なところから変えていくことが必要です。

それにしても、「人」のエネルギーと知を融合・増殖させるための組織というシステムが非効率になっていることに気がつかず、すごくもったいないことをしている企業の多いこと多いこと…。そういう企業ほど、目先の効率やコストパフォーマンスをうるさく言うことが多いようです。

本当に、不思議なことですね。