全メンバーの知恵を徹底的に集める

その中で私は、「当事者として自分の意見は言うが、議論には極力公平・中立に関わる。傾聴する姿勢を持ち続け、よりよい意見を引き出す働きかけをする。自分の意見に拘泥せず、いつでも意見を変えるスタンスを持つ」ことを意識し続けました。

「もっとよりよい会社にしたい。できるだけ皆が腹落ちした、質の高いアウトプットを出したい。そのためには、一人ひとりが自由に発言できる場を皆でつくり、全メンバーの“知恵”を徹底的に集める必要がある」という思いがあったからです。

対立があっても議論し尽くせば質の高い合意形成ができる

どんな会社にも「自分の会社を良くしたい」という思いを持っている人は少なからずいると思います。
では、なぜ皆のベクトルをその方向に向けることが難しいのでしょうか。

その背景には、たとえ「(最終的な)目的」は同じでも、一人ひとりの「興味・関心」や「何に価値をおくか」の違いが、「現状(事実)認識」の違いを生み、それが「方法・手段」における意見の対立として現れる、という構造があるのではないかと思います。

「対立」は精神的な負荷が大きく、一体感を損なうもの。それ自体が問題だとして避けたいと考える、顕在化させないように配慮するのが普通の組織でしょう。

しかし、対立のもとになる個々の違いに正面から向き合い、逃げずに違いを徹底的にぶつけ合って議論することで、一人ひとりの視点・視野・視座が変わり、結果として、組織の「考える力(チーム思考力)」や「一体感」の向上につながるのだと思います。

私にとって、このたびの役員選出のプロセスから得られたものはたくさんありますが、「対立があっても議論し尽くせば質の高い合意形成ができる」という自信が得られたことが、組織としての何よりの成果ではないかと思っています。

「対立」こそが未来を生み出す

「一人ひとりが自身の力を最大限に発揮し、いきいきと働ける組織をつくる」ということは、「一人ひとりの意見が尊重される状態をつくる」ことでもあり、そこには必然的に「対立」が生まれます。

対立は、潜在している個々の価値観やものの見方の多様さを浮き彫りにし、乗り越えるべき現実というものの複雑さを教えてくれます。

この「対立」こそが自分自身の、そして自分たちの未来を生み出す。

これからの組織や社会に求められるのは、そんな発想の転換ではないでしょうか。