こういう話は嬉しいものですが、話には続きがありました。「でもね、しくみや商品を変えて事業を強くしていく突破力が見られないんだよ」と。

突破するために足りていないもの

何が足りないのか? それは、「何としても○○を達成したい」という社長の内なる渇望でした。もちろん、社長だけが志向していても空回りするだけ。経営幹部・管理者などのミドルが、社長のめざす「ありたい姿」に自分の思いを乗せて、本気で考え動いて現場を動かしていくことが不可欠です。

たとえオフサイトミーティングで、自分が抱えていた思い込みの制約が外れたり、上司や部下、同僚との信頼関係がつくられたとしても、自分のこだわりや自分が成し遂げたいものが存在しなければ、仲の良いコミュニティができるだけ、あるいは多少厳しいことを言い合えても実行力に乏しい組織ができるだけでしょう。

今の時代、顧客にとって本当に価値あるものを商品・サービスという形で出し続けないと、企業は存続することはできません。
それはどこかに転がっているものではなく、自分自身の内からしか出てきません。「お客様との接点で提供価値が見えてくる」「技術の本質をとらえてこそ利用価値が見えてくる」など、その人ならではのこだわりから生まれるものなのです。

こだわりを価値に変える

こだわりを価値に変えていくためには、たとえ反対勢力がいようとも、リーダーの「衆知を集めて、自分が決め切る」という突破力が必要です。
オフサイトミーティングで垣根のないオープンな議論をし、決定はリーダーシップで突破する、これが改革の本筋です。

世界の紛争地域で「紛争解決ファシリテーター」として活躍するアダム・カヘンも、著書『未来を変えるためにほんとうに必要なこと』で、「愛(分断されている集団を統一する衝動)」と「力(つくりたい世界を実現する衝動)」の両方が必要だと書いています。
愛は対話を促進すること、力は有無を言わさず決断することです。

決断のためには、社長はもちろんのこと、ミドルも「明確なマネジメントの軸を持って考え動く」ことが必要になってきます。自分が組織で働くうえでこだわる判断基準(コンセプト)となる軸を、私は「自分軸」と名づけました。

ミドルのリーダーシップが会社の変革を左右する

ミドルのポジションは、会社の矛盾の巣窟。まじめに会社や仕事のことを考えているミドルほど、周りへの対応に四苦八苦して振り回されがちになります。責任の大きさを除くと、会社で一番大変なポジションです。

そんなミドルの皆さんに「自分軸」を持ってほしいという願いから、このたび『オレがやる!「負けないリーダー」の仕事術』を出版しました。

残念ながら、デフレの経営環境はまだまだ続きます。経営にとってミドルのリーダーシップが会社の変革を左右すると言っても言い過ぎではありません。
その中で、一人でも多くの「オレがやる!」リーダーが出現することが、会社が生き残っていくうえでの肝だと実感しています。