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企業文化を変えずして、働き方改革は進まない(後編)
~なぜ、25年間も長時間労働問題はなくならないのか~

2017年07月06日

前回のコラムでは、働き方改革を妨げている要因が企業文化にあることについて紹介しました。
一人ひとりの仕事の仕方は、その会社特有の判断・行動特性や、会社として何を是とするかといった価値観によって影響を受けています。
この目に見えないソフト面の企業文化にまで手をつけないと、働き方は変わりません。
後篇は、企業文化を変えるアプローチについて、そのヒントを紹介したいと思います。

 

●最先端のイノベーティブ企業がとる“企業文化で勝つ”戦略

まず、企業文化を意図的に築き上げることを最重要経営戦略としている企業の事例として、最先端のイノベーティブ企業であるGoogleの事例を紹介したいと思います。

人事トップであるラズロ・ボック氏は自著『ワーク・ルールズ!―君の生き方とリーダーシップを変える』(東洋経済新報社刊)の中で、「文化が戦略を喰う」という格言がGoogleという企業を表す言葉だと紹介しています。
会社の成長過程で行なわれていた経営陣の議論を振り返ると、経済性ではなく、一貫してGoogleの価値観を支える文化に基づいて戦略が形成されてきたと言います。
また、社員の人数規模が膨張する中、カルチャー劣化の危機に幾度となく直面し、「最高文化責任者(CCO)」を置いて文化の維持・強化を行なってきたことについても述べています。

今や世界で最もイノベーティブな企業として認められるGoogle。
才気あふれる人材を世界中から引き寄せ、多様な能力や知が結びつき、イノベーションが起こりやすい「企業文化」づくりを経営の中核に据えて成長し続けているのです。

 

●企業文化を自分たちで築き上げる方法論がある

「企業文化なんて変えられるのか?」という疑問を持たれる方も多いでしょう。
でも、Googleの例を見てもおわかりのように、意図して企業文化を創ったり、変えたりすることは可能です。
その方法論として、「組織開発」が近年日本の企業でも注目されてきています。

組織開発とは、前篇で説明した氷山の水面下に隠れている、目に見えないところで働く判断や行動特性のほか、組織メンバーどうしの関わり合い方に働きかけ、組織の創造性や生産性を高めていこうとする方法論です。
まさに「企業文化」そのものを、意図的にデザインし、つくるための経営的な方法論です。
企業文化は、さまざまな要素が影響し合って形成されています。組織開発では、その中でも特に影響力のあるいくつかの要素に働きかけ、全体を俯瞰しながらトータルに企業文化変えていくというアプローチをとります。

ただ残念なことに、「組織開発」といいつつ、輸入物の流行りのコミュニケーション手法やモチベーション喚起手法を部分的に取り入れているだけのケースも見受けられます。
国や地域の文化が土台となり、企業文化は成り立っているので、その企業が属さない国からの「輸入物」の手法をそのまま持ち込んだとしても、うまく変わらないでしょう。
また、部分改善ではなく、トータルに企業文化をデザインしていくアプローチも必要です。

こういった課題を解消したのが、日本発の組織開発技術とも評される「プロセスデザイン」という方法論です。
日本企業が持つ文化特性にマッチしたトータル企業文化創造アプローチであり、私たちスコラ・コンサルトが30年にわたって日本企業を支援して培った実践的なノウハウや知が凝縮された技術体系です。

そのすべてを紹介することはできませんが、今回はその独自性を示す一端として、コア技術としての「カルチャーコーディング」について紹介します。

 

●企業文化づくりはカルチャーコードから始まる

カルチャーコードとは、企業の中でメンバー全員が無意識的に、当たり前に共有している思考・判断・行動原則のことで、
自分の動き方を決めなければいけない時にとっさの一言として自然に出てくる、その企業特有の「お約束」「ルール」といった類のものです。

 

▼カルチャーコードの例

トヨタ 現地現物
Google ユーザーに焦点を絞れば、他のものは後からついてくる
ヤマト運輸 サービスが先、利益が後
サントリー やってみなはれ
HONDA 人まねするな、ものまねするな

 

これらのカルチャーコードを見ると、それぞれの「会社らしさ」をよく表していると思いませんか? 
カルチャーコードはその会社「らしさ」を生み出す思考・判断・行動の原則を含んだ、いわば社員に対する基本動作プログラムです。

カルチャーコーディングとは、こうした「とっさの一言」として共有されているカルチャーコード(お約束)を新たにつくったり、書き換えたり、共有し直したりして、企業文化を新たなものにしていく組織開発技術です。

カルチャーコードをつくるには、いくつかコツがあります。
まず、カルチャーコードは、一般的によくある高邁な「社員行動指針」とは異なります。
とっさの時に思い浮かぶ一言として、覚えやすく思い出しやすいような、ワンワードかワンセンテンスです。
抽象的な概念ではなく、具体的な動作を示す動詞や単語が含まれているものがよいでしょう。

ヤマト運輸の「サービスが先、利益は後」や、サントリーの創業者である鳥井信治郎の口癖だったという「やってみなはれ」などが、まさに良い事例です。
もし、ヤマト運輸のカルチャーコードが、同じ意味を表す「顧客第一主義」という抽象的なものであったら、現場に浸透せず、8年連続の顧客満足1位を維持していないかもしれません(*サービス産業生産性協議会の2016年度調査による)。
いい文化を持っている企業は、このカルチャーコードをうまく使っています。

ただし、注意してほしいのは、「モーレツに仕事をするのがプロ」「24時間、365日が仕事」というコトバがあたりまえになってしまっている企業です。
カルチャーコードが、その会社の社員らしい判断・行動様式や仕事の仕方、企業の動き方を生み出していくため、まずは、その前提となる仕事観や、職場や会社として大事にする価値観から見直すことが必要です。

そのためには、企業のトップも含めて、会社のメンバー全員で、「我々は仕事において何を大事にしているのか」「自分達の存在意義は何なのか」といったことを話し合い、自分たち自身をもう一度見直してみるプロセスが必要です。
対話を通して、みんなで意見を交換しあうことで、個々の仕事観や価値観を見直し、行動が変わっていくのです。

新たなカルチャーコードを生み出し、共有することをしない限り、長時間労働の是正や生産性の向上は望めないでしょう。

 

●「本当にやらなければならないこと」を考えるべき時代に

「働き改革」が注目されている今こそ、自社の企業文化について考えてみる、人も会社も幸せになれる新たな企業文化創造に向けて一歩を踏み出してみる良いチャンスです。

いきなり全社で取り組むのは難しいと思うので、まずは自分の部署などで展開してみてはいかがでしょうか。
部署内で対話を重ねて、「自分たちの約束事」として新たなカルチャーコードが共有されていけば、仕事の仕方や働き方が変わっていくはずです。

「文化が戦略を喰う」。
目先の対処にとらわれるのではなく、「本当にしなければならないことは何か」が、問われる時代になってきているのです。

三好 博幸

三好 博幸(みよし ひろゆき)

体質問題を、「風土・体質=組織のソフトウェア」という観点から構造化し、大組織の変革をシステマティックに展開していくアプローチの開発に取り組む。

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