〈環境と条件を整える技術〉<br/> 「個人スタイル」のマネジメントを問い直す|コラム|スコラ・コンサルト
〈環境と条件を整える技術〉<br/> 「個人スタイル」のマネジメントを問い直す

〈環境と条件を整える技術〉
「個人スタイル」のマネジメントを問い直す

三好 博幸 | 2020.03.12

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〈環境と条件を整える技術〉<br/> 「個人スタイル」のマネジメントを問い直す

あらためて考えてみたいと思います。そもそも、マネジャーとはどういう役割を担うものでしょうか?

すでにマネジメント層の立場にある人は、マネジャーになったときに、誰かからマネジャーの役割について教えられたり、同僚同士で話し合ったりしたことはあるでしょうか。じつは、「マネジャーの役割とは何か」について企業内で議論されることは驚くほど少ないのが実態です。


独自の理解で「個人スタイル」のマネジメントになりがち



たとえば、日本の錚々たる大企業でも、新任マネジャー研修の中身といえば、三六協定や派遣法、メンタルヘルスやコンプライアンス対策など実務知識のレクチャーだけで、せいぜいコーチングスキル研修がそこにプラスされるくらいです。マネジャーに期待される役割といえば、役員から精神論的な訓話を聞かされる程度でしょう。

まともにマネジャーの役割期待について伝えられることもなく、また考えるいとまもなく、任命早々から日常業務に追われる職場のマネジャー、あるいは今までと変わりばえのしないプレイヤーとしての業務に没頭する。

だからマネジャーになっても、マネジャーとしての自分の役割がじつはよくわかっていないのです。マネジャーとして、自分が会社から、部下から、何を期待されているかもわからない。それぞれが独自の解釈で自分の役割を定義して動いているにすぎません。その結果として、多くの企業では、マネジメントが「機能」ではなく、「個人のスタイル」になってしまっているのです。

たとえば、部下に丸投げをするマネジャーがいれば、上意下達で命令するマネジャーもいます。そうしたスタイルは、往々にして「自分の上司がそうだったから」という見よう見まねや、「上司のやり方が嫌だったから、自分は違うやり方で」といった反動に左右されている場合も少なくありません。「どういう目的のもとに、どういう組織づくりをめざすのか」というマネジメントのビジョンがあってのスタイルではないのです。いずれのスタイルにも共通しているのは、とりあえず目先の仕事をさばくことをチームに促す機能くらいでしょう。

部下マネジメントにとどまらず、組織をマネジメントしていくためには、マネジメント層が皆で、「自分たちは何をめざしているのか」「その目的のために、どういう組織をつくっていくのか」「その組織づくりのために、マネジャーはどんな役割を担い、何をすればよいのか」といったことをあらためて考え、「層」として共有していくことが大切です。そして、それぞれが自組織に必要なマネジメントのしかたを実践する、そのことによってはじめてマネジメントが組織の「機能」となります。


あらためて「マネジメント0.0」の原点に立ち返る



そもそも企業は、常に新しい価値を生み出して社会に貢献し、それにより対価を得ていく存在です。その企業の社会に対する貢献は、社員一人ひとりの組織への貢献によって生まれます。したがって、企業としては、いかに社員一人ひとりの貢献を、組織という装置(しくみ、環境)を通してより大きな貢献に変え、社会に出力するかが恒常的な課題となります。この、一人ひとりの貢献をより大きな貢献につなげていくプロセスが最も効果的に働くように、組織内の環境と条件を整えることがマネジメントの機能です。

特に、今のように世界や社会の環境が刻々と変化し、企業価値自体も大きく変わっていく時代には、企業の変化対応力としてのマネジメント機能がいっそう重要になっています。

マネジメントの父と呼ばれるドラッカーによれば、組織とは「自らの機能を果たすことによって、社会、コミュニティ、個人のニーズを満たすもの」であり、マネジメントとは「その組織をして成果を上げさせるもの」です。そのために、マネジメントに求められる機能として、以下の3つを挙げています。

(1)自らの組織に特有な使命(目的)を果たす
(2)仕事を通じて働く人たちを生かす
(3)自らの組織が社会に与える影響を処理し、社会の問題解決に貢献する

ドラッカーの言うところは、ここでお伝えするマネジメントの考え方と本質的に変わりはありません。「そもそも組織とは何か」を考えれば、マネジメントの本質的な機能は自ずと決まってきます。組織やマネジメントの本質は、ドラッカーがそれらを論じてきた時代と変わらないということです。いや、今日に至るまで、組織やマネジメントの基本が相変わらず、ほとんど実現できていない、と言ったほうが正しいかもしれません。

ウェブやマーケティングの世界では「web3.0」や「マーケティング4.0」といった進化形が次々と登場しますが、マネジメントに関しては3.0や4.0を追い求めることは今必要ではありません。むしろ、「マネジメント0.0」の基本に立ち返り、組織メンバーの一人ひとりが当事者として動きやすく、個々の貢献がより大きな貢献につがなる環境と条件を整えて、組織本来の機能を高めていくことが、まず必要です。

こうした「マネジメント0.0」ともいうべき本来のマネジメントの機能を、私たちは「スポンサーシップ」と呼んでいます。


環境と条件を整える機能「スポンサーシップ」



スポンサーシップは、個人の動きを管理統制するようなマネジメントではありません。また、先頭に立ってぐいぐいと引っ張っていくようなリーダーシップとも違います。スポンサーシップにおいて主役になるのは、組織メンバーの一人ひとりです。一人ひとりの主役たちが強みを発揮して貢献しやすい状況をつくり、協力関係の中で、個人の貢献をより大きな貢献につなげられるような舞台設定や演出をしていきます。こうしたサポート的な機能がスポンサーシップです。

組織メンバーが動きやすい環境や条件を整えるためのサポートは、マネジャーに限らず、周囲の同僚や後輩でもできます。その意味で、本来のスポンサーシップは組織の全員が発揮できるものです。しかし、現実には、ほとんどの組織が階層構造をもち、組織単位ごとに、そのマネジメントの役割を担うマネジャーがいます。そして階層
の上位に行けばいくほど、権限と影響力が大きくなっていきます。逆に、下位のメンバーは権限が小さいために、発揮できるスポンサーシップは限られています。したがって、実際にはトップやマネジャーといったマネジメント層が中心となってスポンサーシップを発揮することを求められます。

ところが、現実の組織を見てみると、マネジメント層のスポンサーシップがきちんと機能している例はあまり多くありません。そのことが組織本来の機能発揮と変化対応力を鈍らせる要因になっているのです。

そのような実態も踏まえ、次回はマネジメント層がスポンサーシップを発揮するうえで重要なポイントを紹介します。

 

(本コラムはプロセスデザイナーの著書から転載・編集したものです)
『組織をつくる技術』(三好博幸著)より
http://a04.hm-f.jp/cc.php?t=M1203419&c=44688&d=27f4

著者プロフィール

三好 博幸

三好 博幸

HIROYUKI MIYOSHI

体質問題を、「風土・体質=組織のソフトウェア」という観点から構造化し、大組織の変革をシステマティックに展開していくアプローチの開発に取り組む。

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