組織にとって「安心」は必要なかったのか ~「挑戦の組織力」を高める共同体としての基盤を育てる|コラム|スコラ・コンサルト
組織にとって「安心」は必要なかったのか ~「挑戦の組織力」を高める共同体としての基盤を育てる

組織にとって「安心」は必要なかったのか ~「挑戦の組織力」を高める共同体としての基盤を育てる

高木 穣 | 2021.01.01

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組織にとって「安心」は必要なかったのか ~「挑戦の組織力」を高める共同体としての基盤を育てる

想定外のことが次々に起こるこれからの時代の組織には、自分たちが変わることや経験にないことにひるまず立ち向かっていける「挑戦の文化」が必要です。
そして、その文化を育てるための土壌になるのが「共同体としての安心感」です。

少し前、GAFAのGoogleがパフォーマンスの高いチームに必要な要素として「心理的安全性」を挙げたことから、イノベーティブな発想や挑戦を引き出す組織の環境として「安心」が重視されるようになりました。

思えば平成の時代は、個人が一人で努力し頑張って安心を勝ち取ろうとしていた時代だったのかもしれません。
これからの時代は、多様な個がいきいきと表に現れ、仲間と助け合いながら挑戦できるような集団としての「安心の結びつきや環境」をつくることが大切だと思っています。


コロナ禍に多くの人は「安心」を求める

全世界の人がコロナ禍を体験した今の時代を未来からみると「あそこが転換点だった」と語られることになるのでしょう。
今までの歩みがぱったり止まった先の見えない数か月の間、これからどう生きていけばいいのかと行く末を考えた時期でもありました。

企業の世界でも多くの人がテレワークにシフトし、仕事をする上でオフィスの職場が必ずしも必要ではないことが明らかになっています。
経験にない環境の中で働くことを余儀なくされた人たちは、心の中で何を求めたのでしょうか。
最も大きいのは「安心」ではないかと私は思っています。

テレワーク勤務になって多くの人が孤独を感じたと言います。
業種によっては大きな経済的不安も抱えていることでしょう。
管理職はメンバー個々や全体状況が見えづらくなり、どのようにマネジメントすればいいのか葛藤しています。
日頃のコミュニケーション断絶があらためて浮き彫りになった職場も多く、気軽にものを言ったり聞いたりしづらいために、お互いの関係がますます「疎」になっています。
新入社員や新任管理職は職場になじむ機会が奪われ、孤独と不安の中で辞めていく人も少なくありません。
多くの人が自分の拠って立つ居場所はどこなのか、味わったことのない帰属喪失の状態に戸惑っているのではないでしょうか。


過去は「安定・安心」を基盤とした日本的経営システムで成功

1970年代、80年代は、日本企業の元気がよかった時代です。いわゆる日本的経営は、三種の神器と言われる「終身雇用・年功序列・企業内労働組合」が安定の経営システムとして機能してきました。
日本経済の飛躍的な成長は、その「安心」の基盤の上に皆が力を合わせて一生懸命働いてきた結果だったともいえます。

かつての職場を思い浮かべると、部長や支店長はいつも自分の席で新聞を読んでいるのが馴染みの風景でした。
嘘みたいな話ですが、当時は私も「いいなあ、えらくなると楽そうで」と思っていたものです。
今思えば、そうしながら職場全体の雰囲気や個々に目を配り、心配な部下がいれば飲みに誘い、トラブルが起きると矢面に立って部下を守ってくれていたのかもしれません。

そういう管理職の存在が職場で働く人たちの後ろ盾、心の支えになっていたような気がします。

もともと日本人は、自分の所属するコミュニティに居場所を持つことで大きな力を発揮するように思います。
もっと言うと、個人というより職場全体の“集合的無意識”みたいものが安定することで生産性が高まる傾向にあると私は思っています。

バブルがはじけ、属人的で慣習的なムラ社会のスタイルはもはや過去のものとして片づけられてきました。
情報化とグローバル化という時代の新たなスタンダードを追い求めてきたのが平成という時代だったかもしれません。
しかし、日本企業の人と組織にとっては、いまだにそのスタイルによるいい結論は出ていません。
見方はいろいろありますが、そもそも日本的経営の3種の神器のエッセンスであった“働く人々の安心感”を軽くみていたことも一因ではないかと思います。


個人のサバイバルモードを強めた平成

平成といえば、企業に実力主義や成果主義が取り入れられた時代です。
効率化の流れの中で、今まで固定費扱いだった人件費が変動費扱いになりました。
働く個人は目に見える短期成果を出すこと、個人として評価されることに意識が向いていき、極端な見方をすると“個人のサバイバルゲーム”の様相が色濃くなっていきます。

個人はあまり突出するようなことはせず、自分の枠内で評価を上げるための見せ方、結果の出し方に神経を遣うようになります。
評価を上げるといっても、いい評価をもらうよりも「ダメな評価をもらわない」、そんな意識が全体として強くなったように感じます。

その証拠に、私が組織変革に携わりはじめた20年前ぐらいは「会社をよくしたい」という熱い思いを持った人が社内の至るところに出現しました。
でも今は、そんな改革の種火になるような人を見つけることが難しくなりました。
世代の違いもあるのかもしれませんが、個人の感覚としては「いい会社にしたい」という思いよりも「今、自分ができるだけ安定して働けたらいい」「みんなと仲良くやれればいい」という傾向が強まっているように思います。
一種の「安心」を求める傾向が「自分の枠内で安定を保つ」という方向に働いているようなのです。

私はここで“安心にもっと目を向けよう”ということを言おうとしていますが、「個人の枠内での安心」は、必ずしも全体としての安心感にはつながっていきません。
むしろ個人的な安心を得ようとすることで個々がバラバラになり、全体としての生産性を落とし、助け合いができにくい関係性につながっていきます。
私が言いたいのは“共同体としての安心感をつくる観点を持とう”ということなのです。


挑戦のための組織力を生み出す「共同体としての安心」形成へ

日本企業が平成の停滞状況を克服し、さらに令和に入って直面しているVUCAな環境やSDGsに対応して持続していくためには、今までにあった個の評価や成果の出し方の限界を超えていく「挑戦の組織力」が必要です。
同時にそこでは、多様な人々がオープンに連携して挑戦する文化を支えるソフトのインフラとして、個人から共同体へと拡張された「安心の環境づくり」が新たな課題になります。

といっても、それは大げさな仕掛けを意味するものではありません。
共通の目的に対する人々の共感があり、弱さも含めて個々が互いを生かし合って変化、成長していくことの価値を実感できる日々のありよう、人との関わりやつながりの見直しがベースです。

私たちがどんなテーマの改革支援であっても最初にオフサイトミーティングを行なう理由はそこにあります。
その気楽にまじめな話をする場では、個々が感じていることをオープンに口に出して共有し、互いの弱い部分を認め合いながら連帯意識を高めていきます。
やりとりによる共感や腹落ち感、ダイナミズムなどを実感できるプロセスを通じて、互いに対する安心や信頼を醸成していくのです。

さらに、このコロナ禍で「安心」の意味や重みが変化していることもあり、最近では3密を避けて心身をリフレッシュする機会として、大自然の中で焚き火を囲んでじっくりと対話をする「タキビケーション」も取り入れています。大自然や焚き火は大きな安心感で人を包み込み、チューニングしてくれる装置です。
仲間になるべき人たちとゆっくりと時間をとって、対話し、共同体としての信頼を深めることは、これからのチームや組織にとって大事な基盤づくりなのです。

多くの人々は「安心のある社会」を求めているのに、“今は安心よりも頑張らなければならない”というメンタリティで過ごしてきたのが平成の企業人でした。
頑張っている人には怒られそうですが、これからの未来に向けては“今を安心しながら、さらに将来の大きな安心を得る”というストーリーを考えてみる必要があるのではないでしょうか。

著者プロフィール

高木 穣

高木 穣

YUTAKA TAKAKI

組織変革への重要なファクターである、”場”づくりのプロフェッショナル。その技はスコラの中でもトップクラス。“場”の空気を読んだ振る舞いで”安心感”を醸成し、互いに自然体で話し合える”場”を創り出す。

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