首長を補佐する職員の役割と関わり方|コラム|スコラ・コンサルト
首長を補佐する職員の役割と関わり方

首長を補佐する職員の役割と関わり方

元吉 由紀子 | 2021.06.30

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首長を補佐する職員の役割と関わり方

10数年前、某自治体で行政改革について相談を受けたとき、担当課長が何気なく口にされた言葉に私は耳を疑いました。それは、「首長は消耗品ですけど、私たちは常備品ですから」という言葉です。
そこにどんな意味がこめられていたのか、その瞬間唖然として問い返しそびれた私は、今でもときどき思い出して考えてみています。

確かに、首長は4年ごとの公選によって選ばれるため、同じ首長がどこまで続くことになるのかは誰にも予定できるものではありません。一方、地方公務員の身分は保障されています。それゆえ、“期限がある消耗品”と“期限がない常備品”という任期の違いのみをとらえて説明をされたのかもしれません。しかし、大きく本質を欠
いている言葉だと私には感じ取れました。

地方自治法第153条第1項には「普通地方公共団体の長は、その権限に属する事務の一部をその補助機関である職員に委任し、又はこれに臨時に代理させることができる」とあります。他の条項からも、職員は首長を補助するために存在していることになります。
それゆえ、身分は保障されていたとしても、首長が交替すれば、首長にお仕えする役割を果たすにあたり、首長とともに有効期限が切れてしまう仕事が多数あるのではないでしょうか。これらの仕事を次の首長にどのように伝え、そのまま継続するのか、新たな意味や価値を加えてリメイクするのか、もしくは、終了するのか、“行政の継続性”の観点からきちんと検討できるよう受け継いでいく責任が行政職員にはあるのだと思えます。

それだけに、行政職員にとって首長との関わり方がとても重要になってきます。
「首長を補助するとは、どういうことか」
「補助するために、首長とどんな対話をする必要があるのか」
「首長との対話において、補助する職員にはどんなスキル・能力、行動が求められているのか」
このことについて首長と職員は、十分に話し合い、任期の間にしっかり補助し尽くせる関係を築いていくことが、とても重要です。

企業と違い、組織内でこれまで相互にほとんど関わりのなかった方が首長に就任される場合が多くあります。また、前首長と経歴や考え方、能力が大きく異なるタイプの方が就かれることもあります。
「補助する」ことに対する考え方ややり方も、首長によって大きく異なることがあるでしょう。
この「補助」に関する話し合いは、新しい首長が就任されたとき、首長にとっても、また、職員にとってもとても重要な課題となるはずです。

そこで、“補助する”ために不可欠な職員の関わり方について、私が思う重要な3つのポイントを記してみます。

① めざすものに向けた思いを聴き取る

第一に、“補助する”ためには、首長がどんな思いを持っているのか、特に、どんなまちにすることをめざしているのか、それはなぜかをしっかり聴き取って理解することが大事です。
首長の思いは、出馬時に公示されたマニフェストに書かれていることだけではありません。マニフェストは、当選後果たす約束事項を住民に示すために書かれていますので、言い換えれば約束できることしか書いていないとも言えます。

そこで、本当は書きたかったけれど書ききれなかったことや、なぜそれを書いたのかの背景理由などについては、質問してみなければわからないものです。ここを質問して深く聴き取り、共有できるようになることが、特に、首長の身近にいる幹部職員、管理部門の職員にとって最も重要です。それには、質問力や傾聴スキルが求められます。

② 違和感を問い返して、違いを理解する

どんな人も自分と同じように感じ、考え、行動する人とは、思いを共有しやすいものです。首長と職員の間でも、もともと首長と考え方が近い職員なら、首長から指示を受けたときに「はい、わかりました」とすんなり応じやすいでしょう。

一方、首長とは異なる感じ方、考え方、行動の仕方をする職員の場合には、指示を受けたときすぐには意図が飲み込めず、「これはどういうことでしょうか」とか「なぜそれをやる必要があるのでしょうか」など疑問が湧いてきます。
そこで、すぐに問い返しをすると、首長には、“反対しようとしている”“やりたくないんだ”などマイナスの印象をもたれることになりかねません。この反応を何度も繰り返すと首長から嫌な顔をされることになるのではないでしょうか。それが面従腹背を生み出す危険性をもたらします。

でも、この“問い返し”があればこそ、指示の背景にある思いや考え、価値観を知ることができるのです。価値観の違いには、お互いの経験の違いが大きく影響しています。これらは問い返すことによって違いが明らかになり、その人が何を大事にしているのかが理解、共有できるようになってきます。これは、職員が首長のことを理解するときだけでなく、首長が職員のことを理解するときにも不可欠な対話のプロセスです。
それには、お互いが気軽に問い返しを行えるような雰囲気をつくることも大切で、ここを乗り越えれば「なるほどそういうことだったのか!」と自分と違う考えであっても納得でき、相互の距離がグッと縮まります。そのため、双方向による対話力と共感力を培うことが肝要です。

③ 強みを生かし、弱みをカバーし合う

“補助”は、違いを理解したうえで、足りないところを補い助けることで成り立ちます。
ただし、この関係は、“最初”からうまく噛み合うものとはなりにくいものです。まずは想定していることを明らかにして、実施してみて、その中で見えてきたこと、動きながら考え直したことをうまく取り入れていけば、より実現性のある修正案が見出されてきます。
この試行錯誤が組織を変えていくプロセスとなります。

特に、行政においては、首長と職員の縦の関係だけでなく、部署を越えた横で連携する関係や、都道府県や国、地域の団体など多種多様な主体との関わりが多くあります。首長の強みを理解したうえで、弱みをカバーし合う補助する関係を構築するスキル・能力は、多様な主体との協働プロセスにおいても有効で、まちづくりをコーディネートするスキル・能力のベースになってきます。
そして、職員がしっかり首長の思いを理解し、政策として企画提案し、行政組織の各種計画に反映させて実行し、住民の声や市内外の団体と協働し、外部の力や知恵を加えて評価・改善していくことができれば、政策過程をより実現性の高いものとしていくことができるでしょう。

なお、このような職員の一言から私が長年疑問に思って来た首長の思い(政策ビジョン)と政策過程の結びつきについては、大阪市立大学大学院修士課程において研究した修士論文を編集し直して、この度自治体学会の学会誌『自治体学』Vol34-2にて研究論文「地方分権時代における首長の政策ビジョンと政策過程に関する一考察」に掲載いただきました。よろしければぜひご一読ください。

▼自治体学会『自治体学」Vol34-2、2021.3
https://www.jigaku.org/%E5%87%BA%E7%89%88/%E5%AD%A6%E4%BC%9A%E8%AA%8C/%E8%87%AA%E6%B2%BB%E4%BD%93%E5%AD%A6%E7%99%BA%E8%A1%8C/

著者プロフィール

元吉 由紀子

元吉 由紀子

YUKIKO MOTOYOSHI

生活者起点で時代最適の価値を創造し続ける経営を実現できるよう、トップと現場の有志たちが連携・共振していくプロセスを一緒に築きあげている。

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