学校の組織風土の現状

教育ビジョンでは、信頼される学校経営の推進をかかげ、区立小中学校の校長先生たちが民間企業経営の理念や経営手法などを学ぶ機会として「学校経営塾」が創設されました。

昨年は、教育委員会主催で3つの講座が設けられました。私は「環境変化に対応する変革リーダーシップと組織風土づくり」というテーマで講座を担当しました。8月下旬から11月初めまでの3回、小学校長19名、中学校長8名の27名で3時間のワークショップ形式の研修を行ないました。

学校の組織風土の現状について、参加者の事前アンケートからは、次のような共通した問題意識が見えていました。

(1)前例踏襲
(経験重視、慣例に従い新たなことにチャレンジしない)

(2)指示待ち
(主体的にアイデアを出して取り組まない)

(3)リーダー不足
(周囲を巻き込んで自ら先頭に立って動く人が少ない)

(4)創造性・発想力の欠如

多くのステークホルダー(利害関係者)に対応するために、先生方はますます多忙となり、外部からの要請に応え、現場で起きる問題に対処していかなければなりません。団塊の世代の退職により、ここ数年は若手の新採用教員も増えています。それぞれの学校で、トップとして校長は学校の目指す姿(ビジョン)を描き、ホームページや全校集会で語っていますが、果たしてそれを実現するための組織風土や人が育っているかどうか、が課題となっていました。

みんなが実現したいと思える学校の姿にできるか

校長が描いたビジョン(=与えられた目標)から、いかに教員みんなが実現したいと思える学校の姿にできるのか。第2回は、2学期がスタートした直後というタイミングに合わせ、新学期に何を、なぜ変えていきたいか、という「校長メッセージ」を教員に発信し、教員の意見を聞いてくる、という課題を出しました。メッセージ内容はさまざまでしたが、教員に向けてというよりも、児童や生徒に向けた新学期の挨拶と一緒になっているものも多く見受けられました。

中には、教員全員にアンケートをとってみた、どんなことを考えているのか直接聴いてきた、という校長先生もいて、「学校を良くするために、自ら考える教員チーム」が起動し始めた学校も出てきました。
アクションラーニングの良いところは、課題を整理して持ちかえり、次のステップに向けて実践してみる。その結果を持ち寄って、シナリオをつくり込んでいくことができることです。

実践を通して推進チームをつくる

第3回までには2カ月ほど間があったため、「実践を通して推進チームをつくる」というテーマのもとに、学校内でそのプロセスを実行していただきました。管理職、若手、教科担当などのグループで、オフサイトミーティングなど気楽に話ができる機会を設け、推進メンバーが自ら課題に取り組む環境をつくるというのが課題です。
手ごたえを感じてきた校長先生も多かったようです。「会議とは異なる場で、どんどん意見やアイデアが出てきた」「皆、いろいろなことを考えていて、自ら手を挙げて動いてくれるようになった」「雰囲気が前向きになってきた」と、グループディスカッションで熱く語る人も出てきました。

学校や行政組織には、民間企業とは異なる様々な規制や制約があるのも事実です。しかし、このような機会に、暗黙のうちに無理と思っている、答の出ない、しかし、リーダーとして考え行動しなければならないことについてあえて議論をする。

「(より優先すべき)お客様は誰か?」
「(緊急ではないが重要なことを考える時間を創出するために)やめてもよい事は何か?」
「(職制に関係なく、自ら考え行動し、協力し合えるチームをどうやってつくるか?」

こういった問いをもって、普段の制約をはずし、話し合う。そして、話し合っただけではなく、リーダーシップの実践を通して、これらの問いに自分なりの解を導き出していただけたのではないかと思います。