「協力のテクノロジー」「チームワーク・テクノロジー」「組織テクノロジー」、どれも耳慣れない言葉です。ネットで検索してみても出てきません。そもそも、そういうコンセプト自体が今まで存在していなかったということなのです。長らく組織というのは「制度」として存在していたからです。

5つ目のイノベーション「組織」

今日、多くの企業が市場のボーダレス化による過当競争から脱出するために模索しているイノベーション。

イノベーション論のさきがけであるシュンペーターは、イノベーションの5つのタイプとして、〈新製品・サービスの開発〉〈新しい生産方法の導入〉〈新マーケットの開拓〉〈新たな資源の獲得〉〈新しい組織システムの実現〉を挙げています。

通常、「イノベーション」というと、すぐ思い浮かべるのは前の4つのパターンではないでしょうか。多くの企業がその実現に努力しているのも、この4つの領域でのイノベーションです。5つ目の「組織のイノベーション」については、残念ながら、本気で取り組んでいる企業はまだまだ少ないのが現状です。

当たり前のことですが、イノベーションの源は人の知恵です。そして、個人が持つ知恵と知恵を結びつけ、協力を通じてより大きなイノベーションにつなげていくためのシステムが「組織」です。

たとえば、職人は良い仕事をするために、まず道具をつくります。あるいは、良い製造装置がなければ、良い製品は生産できません。それと同じように、イノベーションを生むためにはイノベーティブな組織をつくることが大前提になります。ところが、そうした「組織」をつくることが後回しにされて、新たな製品や生産方法、市場、原材料のイノベーションを追い求めているのが、多くの企業の実態です。

 

その最大の理由としては、企業が組織をつくるテクノロジーがあることを知らなかったために、どう着手すればいいのかがわからなかった、ということがあります。協力のしかた、チームワークひとつをとっても、イノベーティブなものに変化させ、つくり込んでいくためのテクノロジーがあるのです。私たちはそれを「組織技術(テクノロジー)」と呼んでいます。

イノベーティブな組織をつくる「組織技術(テクノロジー)」

これまで私たちは、組織の機能不全をひき起こす「風土・体質」の変革において、この「組織技術(テクノロジー)」を多くの企業支援の現場で使ってきました。そして、その実践知(目のつけどころ・考え方・変え方)と、有機的な組織に対する知見をまとめ、体系化した「組織技術(テクノロジー)」を近々公開する予定です。

組織を扱うためには、ある種の専門技術が必要になることをまず知っていただき、少しでも多くの会社で「組織のイノベーション」の取組みが始まること。その取組みを通じて、企業ごとの特徴や文化にもとづく新たな知見がオープンイノベーション方式で追加され、使い手によって技術(テクノロジー)がふくらみ、磨きがかかっていくことが私たちの願いなのです。