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戦略・方針の実行品質とスピードを上げるために管理職は何をすればいいのか
 90年代、学生の就職人気ランキングが上位だった日本航空が再建に向けた法的整理を余儀なくされるような事態になるとは、どれだけの人が考えたでしょうか。もはや、安定の保証がどこにも求められそうにない時代です。このような混沌としたビジネス環境の中で必要なのは、独自のアンテナで変化を察知し、主体的に考えて動ける現場の俊敏な対応力でしょう。

 残念ながら、経営だけが危機感をもって戦略や方針を出し、現場にガンガン「やれ」と言うだけでは対応力は強化されません。対応力というのは、仕事の実行の品質とスピードを実現するもの。まさに日々の仕事の中で、管理職や現場のメンバーが、方針を「自分のものにして考えることのできる主体性」と「チームで協力して具体化・実行する力」を鍛えることによって生まれるものだからです。

 当たり前の話ですが、戦略も出しっぱなしで終わっては、当然「絵に描いた餅」にしかなりません。現場がそれを受け取って、チームで主体的に実行していくためには、下記のような視点でマネジメントがリードして、職場チームの新しい能力形成と仕事のしかたへの転換を支援していくことが必要です。

 一つ目は、戦略を管理職層が職場で再定義し、部門が当事者になることです。戦略や方針について、与えられたもので済ませないように、「なぜ」「何のために」この課題に取り組むのか、背景や意図を自分たちで考えます。自分たちがやる「意味や価値」について考え、話し合うことで目的や現状の問題が明確になり、考え抜くことでメンバーが実行当事者になっていくのです。

 二つ目は、現場のメンバーが自発的にチームワークするための関係性の構築です。
 職場内でお互いが腹を割って話し合い、実行に向けた協力関係をつくるようにします。そのために、それぞれが目的とその具体化、自分の業務とのつながりを考えながら、実行に向けての問題や制約だと感じることを職場全体で共有し、どのレベルでどんな協力が必要か、どう打開していくのか、知恵を出しながら徹底してオープンに話し合います。
 この部分をショートカットすると、言い訳の余地を残した建前の実行プランになりかねません。「できない理由を顕在化」したうえで実行するにはどうしたらいいかを考えることは、本音で動くための大事なポイントなのです。

 三つ目は、現場の実行支援です。職場で考え抜いて具体化した戦略を実地に実行していくとき、メンバーがぶつかる部門間の壁ルールや制度などの障壁を取り除いて動きやすくすること。すなわち現場がスピーディに動くためのマネジメントによる環境づくりです。
 現場が今とは違うやり方で経験にないことをやるわけですから、マネジメントにもまた今までとは違う姿勢や支援の中身が求められます。管理者同士が相談できる関係性をつくって、連携して一体で機能すること。現場がたえず物理的、心理的に「話し合い、考え合う」ことができるような職場環境をつくること。マネジメントの意志で、個々の主体性と同時に職場、部門もまた主体的に戦略を実行していくための条件をつくるのです。

 このような、現場の自律的な戦略・方針の展開能力を高めるためには、スタッフ部門による管理職への支援が不可欠です。スタッフ部門は従来の「自分たちは計画をつくり、やるのは現場」という構図を変え、部門の管理職と連携しながら、事業部門の新たな試みや業務変革を後押ししていく組織的な支援をします。
 こうした動きは、それぞれの部門の役割を分担して特化・集中するのではなく、目的に対して組織の各機能をネットワークして力を集中していく、という意味での組織能力の強化でもあります。それが経営のスピードアップ、変化対応力をもって戦略が現場で実行されることにつながる早道だと考えています。
プロセスデザイナー 源明典子




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