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自分は、どこで生きることを選ぶのか?
 先月、平和や環境をテーマにしたワークショップの第一人者である中野民夫さんらが企画する合宿に参加してきました。場所は屋久島です。いくつかの対話セッションの中でも特に印象に残ったのが、屋久島に移住して30年になる作家・星川淳さんを招いての場でした。折りしも台風2号が最接近し、観測史上最大の雨量を計測した暴風雨の夜で、停電に備えてロウソクが用意されていました。

 投げかけられた問いは、「どこで生きることを選ぶのか?」

 若いときに日本を飛び出し、インドや北米の山奥で近代文明に頼らないオルタナティブな生き方を求め、その後、屋久島に定住して自給自足に近い暮らしを営んでいる星川さんにとって、多くの日本人は「本能的生命知」を喪失してしまったかのように見えるそうです。
 ただし、生き抜くための知恵や力を研ぎ澄ましていくネイチャーライフを送りつつも、ご自身は都市での生活を否定されているわけではありません。「物事の両義性をジレンマとしてネガティブにとらえる必要はないと思う」ともおっしゃっています。

 事の本質は、片側を見ているだけでは全体をわかったことにはならない。全体を見るからこそ、アンバランスに気づき、「バランス感覚」を積極的に働かせて生き方を選ぶことができる。そんな全体観のうえに立って、主体的に今の暮らしを選ばれているように思えました。

 気がつくと、ビジネスの世界に20年以上どっぷりと浸かり、それが世界のすべてであるかのように感じていた私には、とても耳の痛い話でした。

 さて、東京に戻って来て「どこで生きるのか?」の問いに、私はあらためて「ビジネス」を選びます。ただし、ここでカッコをつけた「ビジネス」は、過去のそれとは意味あいが異なります。

 ビジネスとは、そもそも「事業目的を上位においた経済活動」。そして、これからの「ビジネス」は、日本のみならず地球規模のテーマになっているエネルギー問題をはじめとして、ますます国家や社会、環境問題と切り離しては成立し得ない時代になっています。 すでに今日、ビジネスの目的は「収益を上げる」だけの単純なものではなくなっているのです。

 とくに、ありたい姿としての「持続可能な社会」をつくっていくために、「ビジネス」のメインプレーヤーたる企業の果たす役割は大きくなっています。このような全体としての課題に向き合えない企業は、早晩儲けることもできなくなっていくでしょう。

 私がお手伝いしているクライアント先でも、持続可能性において自社の事業価値の見直しを考える機会が増えています。直接的なテーマとして取り上げているわけでありませんが、社会・環境問題を考慮した視点がよりクローズアップされていることを実感しています。微力ながら私も、そのような「ビジネス」の方向性を後押ししていきたいと思っています。

 屋久島の合宿ですべての灯りを消して、ワークショップに参加した仲間たちと大きな庭に寝そべって、台風一過の澄んだ満天の星空を、夜が更けるまでずっと眺めていました。ほろ酔い気分も相まって、はるか彼方の宇宙の大きさや歴史に思いを馳せました。そんな想像力をはたらかせることが、本当に大事なもののことを思い出させてくれます。
 そして、自分の中に多様な世界に出入りできる目をもつことが、「ビジネス」の再発見と再構築にもつながっていくのではないかと思っています。


プロセスデザイナー 野口正明




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