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「いい働き方」で社会を支える
 「自分に何ができるだろうか」。震災の直後、多くの人が自分に投げかけた問いだと思います。
 プロスポーツ選手やアーティスト、医師や看護師といった人たちがそれぞれの専門性をもって被災地支援を行なっているのをテレビやネットで目にしました。ある意味でうらやましく感じたものです。もちろん、企業も物資やサービスの提供にとどまらず、さまざまな支援をしています。しかし、企業で働く個人は、一個人としての寄附や消費行動の節制、節電などはできるものの「企業人」としての貢献方法はなかなか見いだせなかったのではないでしょうか。

 企業は、組織がまとまって何かを行なえば大きな力になります。個々がバラバラでは実行の力がダウンする。企業というシステムはやはり一致団結して社会を支える存在だということをあらためて実感させられました。
 また電気がないと何もできない、交通機関が止まると動きがとれない。一つが止まると多くのものが停滞する。そんな体験を通じて、企業があらゆるものとつながっており、それらが円滑に動いている中で自分たちの活動は成り立っているのだと実感しました。

 今までの企業運営は、ある面で「自分の利益を優先する」という人間のエゴ的な側面をエンジンにしてきました。金銭的報酬、出世、実力主義評価などは「自分が、自分が」の競争を促進させるしくみです。その中では、他人よりいかに抜きんでるかが個人の重要な関心事になります。企業自体が自由競争の中で、いかに他社に「勝つか」「生き残るか」でしのぎを削っている存在ですから、個人にもそれと同じ原理が働くのは当然です。
 しかし、今回の震災で強く自覚したのは、一方で、人間は「何かで人の役に立ちたい」「困っている人を助けたい」という良心を持っているということです。このもう一つの人間の特性を、これまでの経営はあまり生かしていなかったように思います。

 もちろん、戦後の復興から経済成長を遂げていく時代にはエゴ的側面のエネルギーの強さを生かすことが全体にとって有効だったのでしょう。しかし、これからの時代は、もう一つ、人間の「良心」の側面にもスポットをあてて経営をしていく必要を感じます。

 私たちは、企業風土改革のお手伝いをしていますが、本当に会社が変わっていくときというのは、社内のさまざな場面で社員が立場を越えて協力し、その協力がお客様や社会に役立つ方向に向けられたときです。逆にいうと、自分たち以外の誰かの役に立ちたいという気持ちが束なったとき、協力が生まれ、変革が成し遂げられるといってもいいのかもしれません。

 これから日本が立ち直っていく過程において、企業が重要な役割を果たすことは間違いないでしょう。ただし、経済の復興という側面だけではありません。人がいきいきと本来の前向きさで協力していくためには、企業の存在意義やあり方、働くことの意味や目的などを考え模索するプロセスが必要です。他者は単なる競争相手ではなく、授受のつながりで手を差し伸べ合って生きていく存在なのだということを認識し、本気で「働き方の変革」に取り組むべき時期が来ているのではないでしょうか。
 それによって獲得されるエネルギーが、社会を支える新たな力になると思うからです。
プロセスデザイナー 高木 穣




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