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「想像の未来」から「創造する未来」へ

「会社の10年後? そんな未来がほんとうにあるのかどうか…」

 ある大手企業の管理職が口にしたショッキングなひと言だ。
 いつも歯切れよく自分の見解を述べる彼が妙に弱気であること、なによりも、彼が会社の中長期計画をつくる立場にいることが、その言葉の意味をなおさら重く感じさせたのかもしれない。
 彼は、会社の10年後の未来を設計する一方で、その計画を実現する会社はもう存在しないかもしれないと感じているのである。

 ここ1〜2年、多くの会社で同じように、将来への不安の声を耳にすることが多くなってきた。市場や産業の構造変化は見えているのに経営のスタンダードは変わらない。中国をはじめとする新興国がめざましい経済発展を遂げる傍らで、経済ばかりか国力までも低下していく日本。そんなメディアの情報に危惧をいだきつつも、それぞれの会社の「今日の仕事」は、ただただ忙しく過ぎていく。
「このままでいいのか」という不安、「どこかおかしい」という違和感は社員の足どりを重くしている。でも、日々の仕事を必死にこなすことで不安を押さえ込んでいるようにもみえる。

 ある会社の営業マンからこんな話を聞いた。
「わが社はここ数年、売上げが下がっている。もう全然売れない。売れないからといって顧客回りの数を増やして仕事はどんどん忙しくなっている。でもね、もう、インターネットで世界中の商品を買える時代がきている。このまま今までと同じ仕事の仕方をしていても、未来はないよ」
 そう自嘲ぎみに言いつつも、彼は朝から深夜まで与えられたノルマ達成に向けて、いつもと変わらない仕事を頑張っている。なんだか切ない話だ。

 この道の先は「崖っぷち」だとわかっていても、その道をひたすら歩く。なぜ私たちは、やがて絶えてしまうこの道を離れて、未来への道を歩き始めることができないのだろうか。

 かつての自分がそうだった。
「未来への道」は、いま歩いている道の向こうにはないのが厄介な点だ。一度は必ず思いきってジャンプして「新しい出発点」を自力で決めなければならない。これがけっこう怖い。
  ここに進路をとるのは危険ではないか? ほんとに成功するのか? 費用対効果は? 失敗したらどうリカバーするのか?  と周りの誰もが問う。結局、そのリスクを誰もとりきれず、未来をつくるエネルギーやチャンスを生まないままに、一番無難な今の道、すでにある過去の延長線をただひたすら歩いてしまう。

 新しい出発点を見つけるためには、まず唯一絶対の「答え」は存在しないことを理解しなければならない。
 私たちはよく「過去の成功事例や他社の成功モデルをキャッチアップの手本にする、理論書のフレームワークなどを当てはめる」といった方法をとる。しかし、それは過去の環境や経験で未来を「想像」しているに過ぎない。本当の「創造」は、いま目の前にある現実を自分たちの体感でとらえ、考え抜くことでしか生まれない。

 そこにはまた、社員個人の思いや能力だけではとうてい越えられない壁がある。一人の見えている現実だけで考えることには限界がある。さまざまな立場の社員がお互いの意見を聞き合い、目的や思いを合わせて対立を超えるなかで、より創造的・共感的な「答え」を生み出していくというプロセスが必要だ。
 もちろん、組織がそれを本気で求めているか。そんな社員を現実に後押ししてくれるのか、といった環境面のサポートも必須である。

 多くの社員が自分たちの未来を自分の言葉で考え抜き、心からそうありたいと思える「答え(新しい事業やサービスの目的とそれを実現するチームの姿)」を描き出すことができたら、それは必ず「未来への道」へとつながっていくはずだ。

 私たちがお手伝いしている「過去や立場、役割、さまざまなしがらみや対立を超えて、社員が真摯に会社の未来を考え抜く対話の場」は、10年後の未来に続く道なき道への小さくも勇敢な一歩を踏み出すことなのだと、最近とくに強く感じている。

プロセスデザイナー 辰巳和正




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