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「生産性向上策」が現場の生産性を阻む理由(わけ)
 会社の推進する「生産性向上策」が裏目に出て、かえって現場の生産性を阻害している――そんな状況があちらこちらにみられます。その要因として「スタッフと現場のコミュニケーションが悪いからだ」という声を聞きますが、本当にそれが真の理由でしょうか?

 複数のIT企業で、社員に日頃の仕事に関する意見を自由に言う機会をもったところ、会社が生産性向上のために各現場に浸透をはかろうとしている施策に対する不満が口々に出てきました。主なものは次のとおり。

・ただでさえ忙しくて時間がないのに、提出すべき書類の量が多く、負担感が大きい。
・本社はメールで一律一斉に通達するが、自分の現場にどうあてはまるか解釈するのがたいへん。
・制度のルールが頻繁に改定され、ついていけない。
・自分にとってのメリットが感じられない。

 企業によって制度や施策の名称は違うものの、生産性向上という経営方針のもとに、本社のスタッフ部門が展開する施策は、総じて、現場には評判が悪いのです。
 さらに聞いてみると、こんなことがわかりました。

 システム開発の現場は「顧客の要望に徹底的に応えること」によって会社が成長してきた背景もあり、多くの複雑な作業を期限までに段取りよくこなす能力が磨かれている。それと同じ要領で、社内から降ってくる施策についても、現場の社員はまじめに受けて黙々とやりこなしてしまうようなのです。

 「まじめ」といえば聞こえはいいが、思考を作業完遂に集中させ、負担が大きくても意思表示しないので、問題が表に出ない。反発の声も上がらないので、スタッフも良かれと思い施策をうち続ける。スタッフ部門ががんばるほど、それをこなす現場の負荷は増加する。そんな組織的な悪循環に陥っていると言えます。つまり、施策を補正するフィードバックがかかっていないのです。

 では、どうすればこの不幸な悪循環から抜け出せることができるでしょうか。
 意外なようですが、「スタッフ部門のミッション議論」が、悪循環を抜け出す糸口になるのです。

 ある企業で、スタッフ部門のメンバー10名による「見積りの標準化」ワーキング活動をお手伝いしたときの話です。検討の過程で見えてきたのは、スタッフの一人ひとりが孤独で、自分の仕事に自信を持てていない、という事実でした。
 取り組んでいる業務が、相手にも喜ばれず、何のためにやっているのかわからなくなる。期日に追われるわりには、達成感がない。自分は会社に貢献しているのだろうか? 仕事のやり方の話ばかりして、自分たちが何をめざすべきか、ミッションを論議していないから、閉塞感から抜けられない…。

 その後、数回の議論を経てメンバーたちはこう語りました。  

「仕事の成り立ちの全体像が見えたことにより、一つひとつの作業の意味が考えられるようになった」
「何の役に立つのか疑問なままとりあえずやっている仕事があったが、やめることへの意を強くした」
「もっと上の人たちの考えを聞きたい」
「現場の意見も聞きたい」

 この議論を通じて彼らは、自分たちのミッションを考え話し合う重要性を実感したのでしょう。その表情は、明るくポジティブに変わっていました。

 生産性向上策を展開するスタッフ部門が、自分たちの仕事の意味を考えることで、仕事への自信を持てる。その結果、他者と真剣に関わり合い、組織の悪循環を変えていくのだと思います。
プロセスデザイナー 刀祢館ひろみ




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