「自由記述」のコメントを、役員全員が受けとめると宣言
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新体制になって最初のサーベイ実施にあたって、N社長は「あなたが会社に対して感じていること、変えてほしいと思うことを、率直に書いてください」と全社員に向けてのお願いをし、「自由記述に書かれたコメントは、私たち役員が必ず読みます。皆さんの意見を、絶対に無駄にしない」と宣言しました。
数百件、数千件にのぼるかもしれない社員のコメントを、自分たちがすべて読む。当然、役員たちは戸惑いました。しかし、「社員の声を直接聞きたいと言いながら、それを人事部任せにするのでは意味がない。私たち役員が直接読む。そこから、経営として何をすべきかを考える」というN社長の決意に、役員たちも腹を括ったのです。
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寄せられたコメントは、3,000人から3,500件!
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サーベイの結果は想像を上回るものでした。 選択式質問への回答率は約90%。そして、自由記述欄には3,500件ものコメントが寄せられていました。 通常、自由記述欄への記入率は高くても3割程度とされています。T社は約3,000人の組織で、記入件数は3,500件。1人で複数のコメントを書いた社員がけっこういたのです。その内容も、表面的な不満にとどまらない率直な意見が多く、長文に及ぶものも少なくありませんでした。
なぜ、これほど多くの声が集まったのか。
おそらく社員たちは「書くことが無駄にならない」と感じたのでしょう。「皆さんの意見を絶対に無駄にしない」というN社長の発した言葉が、社員一人ひとりの心に届いたのだと思います。
宣言どおり、役員たちは3,500件のコメントをすべて読み込みました。業務の合間に、通勤の電車の中で、自宅で夜遅くまで、休日も。一件一件ていねいに目を通していきました。 会社への肯定的な声もありましたが、大半は厳しい意見です。
「会社のめざすものが抽象的で、よくわからない。自分たちはどう動けばいいのか?」 「『新しいことに挑戦しろ』と言われても、現場は目の前の仕事に精一杯でそれどころではない。現場の実態を見てほしい」 「人事評価制度は変わったが、実際に評価されるのはこれまでと同じ『短期的な業績』。何のために制度を変えたのか、自分たちは何を頑張ればいいのかわからない」
ある一つのコメントがN社長の目に留まりました。 「経営陣は『人が財産』と言うが、実際には数字しか見ていない」
N社長は、パソコンの画面を見つめたまま、しばらく動けなかったといいます。 自分は本気で「人が財産」だと思っている。建前で言っているのではない。心からそう思っている。しかし社員には、そう見えていない。 数字からは感じることのできない、重く生々しい現実がそこにありました。
(後編につづく)
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