私は、Aさんの想いを次のように受けとめた。
(1)参加企業の瞬間的ではない、持続する変化をつくる。
(2)参加企業10社に栃木県内のDXを含んだイノベーションの流れをリードするコアメンバーになっていただく。
(3)モデル企業をつくり、そこから生きたメソッドを発信する。
(4)これらを9か月間のプログラムで実現する。
我々が通常、支援している企業風土改革プロジェクトで考えると、9か月間は短い。少なくとも一年半はかかるだろうことを約半分の期間で行なおうというのである。依頼元のリクエストを変化のチャンスと捉え構想した。
「栃木県チームイノベーション実践プログラム」は、支援者である私たちにとってもイノベーションの機会であった。
9か月間での生産性向上と働きがいの同時実現のグランドプロセスは「一品」を探して、伸ばして、広げること。その中で、ぶどうが熟成して、ワインになるように、自社の得意技能を掘り起こして発展的な形態へ、価値の飛躍をめざす。
新商品開発がイノベーション、新しいことをやることが生産性アップと主張する人もいる。それらの手法とは異なる、すでに自社にあるもの、既存のものを足場に、顧客に向けて価値を伸ばし、伝えるトライを日常の仕事にしていくことをプログラムの核にしている。
チームで参加する8回の商品・サービスの改良ワークショップと同時に強化したのが、参加企業との現地での作戦会議である。集合する場よりも、現地で行なう作戦会議の回数がより多いことが本プログラムの特徴でもある。
臨機応変に、各社の変化をつくりだすことに注力しなければ、「勉強しました」「ためになりました」で終わってしまう。
かつての大分県一村一品の成功には現地に出向くコーディネーターの存在が大きかったと聞いている。我々も同様に現地、現物、現場での取組を大切にしている。