やってみなくてはわからないことなのだから、まずはやってみよう。
つい先日まで、スコラ・コンサルトのことも、組織開発も風土改革も知らなかった人がこのように考え、実践しようとしている。そのことに私はちょっとした感動と“同盟者意識”のようなものを感じて、思わず言葉が出ました。
「やってみないとわからないことはやらない、という選択をする人も多い中、やってみないとわからないことはやってみようという、そのスタンスを私たちは『プロセス型』と呼んで、まさに新しいパラダイム、価値観の一つだと思っています」
すると本部長はちょっと驚いたように、「そうなんですね。私はこのスタンスでずっと“変人扱い”されてきました」と、笑いながら言いました。
やってみないとわからないことをやってみる。この考え方を「変だ」と不備、不完全に感じるパラダイム、価値観は、企業だけではなく社会全体でもまだまだ支配的な気がします。綿密に計画し、その通りに実行することで、確実に結果を得る。それは取り組みの対象や条件が固定できる場合にはとても有効な、理に適った近代的な考え方だと思います。
しかし、もう一方で、経験したことのないテーマの新規事業のように、従来のアプローチ方法では対応しきれないものも現実にはたくさんある、とするのが真に科学的なものの見方ではないかと思います。
より複雑化する課題、変化する環境下での未来については「あらかじめ見通して、すべてを詳細には計画できない」不確実な要素がたくさんあります。同様に、人の感覚・感情を伴う創造やエンゲージメントのような「わかりにくいけど、とても大切そうなもの」も無数にあるのではないかと思います。
そういったものを簡単に切り捨てず、学べば変えられるかもしれないと考え、可能性として何とか扱おうとするのが、変化の時代に必要なオープンマインドのスタンスではないでしょうか。
たまたま出会った2社の方々と接する中で、未知のものを試してみようと考える「“心あるリーダー”がいる“心ある会社”」には、“人”の可能性に希望が持てる何かがあると、私は強く思いました。
長年“変人扱い”されてきたというB社の本部長は、組織の常識とは違っていても、自分なりに大事だと感じることを大切にして仕事や人生に向き合ってきたのだろうと思います。そして、そういう人を本部長に据えた会社にも、言葉にならない何か“大切にしたいもの”があったということではないでしょうか。
最初に取り上げたA社でも、ボードメンバーは不安を持ちながらもオフサイトミーティングに取り組み始め、それを主体的に活用するようになっていきました。新しいものを取り入れて変わることにつなげたいという柔軟な態度は、A社が長い歴史を持ち、国内トップの地位を不動のものにしてきた老舗の優良企業であることと無縁ではないと感じます。
理念や哲学といった、明確な形になっていなくても“これは大切にしよう”というものが共有されている。それが「やってみないとわからない」という局面に立った時に、「やらない」のか、「やってみる」のか、挑戦の態度を分ける組織文化なのかもしれない、と私は感じています。