会社をよりよくしたいという人たちを応援したい、私たちの思いは昔も今も変わりません。

その一方で、時代を経て変わってきたこともあります。
特に大きな変化は、「組織をよりよくする」取り組みが企業の公式な業務になってきたことでしょう(喜ばしいことだと思っています)。

自分たちの力で進めていく「持続的な組織風土改革」の時代へ

今日では、人的資本経営を支える新たな基盤づくりとして、持続的な組織風土改革や組織開発が重要な経営課題になっています。それと同時に、活動のスタンスも、狙った結果を出す短期的な施策ではなく、質的な変化や成果を生み出す“生成的なプロセス”を重視する、長期視点での見方に変わってきています。

その表れの一つが、自社の風土・文化を自分たちの手で耕し続ける「風土改革推進室」「組織開発室」などの専門組織の設置です。

自社の人・組織の環境をよりよくする取り組みを外部に任せるだけではなく、内製化して自力でやっていく、自走できるようにしていこうという機運は、年々高まっているというのが実感です。私たちのもとへも、そういう部署の担当の方々からの「立ち上げ・スタート段階のサポート」や「自走のための条件づくり」に関する相談が増えてきています。

業務として行なう組織開発の「立ち上げ期」
大事なのは「何をやるか」の前に「何のためにやるのか」

私たちの側でも外部支援型から内製支援型へとコンサルティングの前提が変わる場合に、あらためて重要だと感じていることがあります。その一つが、「立ち上げ期」のプロセスをどうつくるかです。
ここでは、組織開発室のケースで考えてみましょう。

組織開発を業務として進めるとなると、どうしても最初に考えたくなるのは、まず「何を(どんな施策を)やるか」です。対話の場をつくる、研修をする、職場単位の活動を企画する、推進メンバーを育成する…。もちろん、こうした施策の展開も必要です。
ただ、その前に考えておきたいことがあります。

【活動の出発点で必要な問い】
◇そもそも、会社は何のためにこの活動をするのか
◇自分たちの会社にとって、どのような意味があるのか
◇この活動を通じて、どのような価値を生み出し続けたいのか

活動の意味・目的・価値があいまいなままでは、「対話をすること」「研修をすること」「施策を展開すること」自体が目的になりかねません。
「何のために」という目的を考え、それが軸として共有されていれば、状況が変わっても、自分たちでやり方を考え、柔軟に変えていくことができます。

そのうえで、「担当部署がレールを敷いて主導する」のではなく、現場のマインドを大事にして一緒に活動を進めるために、考えておきたいことがあります。

【持続的な活動にするための問い】
◇誰が旗を持ち、どんな思いで進めるのか(思いのある取り組みにする)
◇経営や各職場と、どんな関係をつくっていくのか(つながりをつくる)
◇どこまでを事務局が担い、どこから職場に委ねていくのか(推進部署の役割を明確にする)
◇将来的に、職場が自分たちで考え、動いていける状態をどうつくるのか(職場主体の取り組みにする)

そもそも期間限定で目標を持って計画的に進める施策とは違い、組織文化や風土の醸成というのは“持続的な取り組み”です。
特徴としては、関わる人のあり方や動き、相互作用によってプロセスがつくられ続けていく活動といえます。管理したくても、人の変化や成長とともに進展していくプロセスの行方は未知であり、途中で得られる成果も定性、定量、多種多様です。
そこでは新たに、答えのないあいまいな状況に耐える、小さな不確実性に慣れるなど「未知を扱うマインドとスキル」が必要になるのです。

風土改革を実践してきたスコラ・コンサルトの「プロセス型アプローチ(プロセスデザイン)」は、こうした前提に立っています。

その経験を踏まえると、初期の立ち上げ段階から、活動が自律的に持続していくための条件をつくり込んでおく、活動の進め方に仕掛けとして組み込んでおくことが、その後の「自走化」に大きく関わってきます。

つまり、

 「自走化」は、活動が軌道に乗ってから考えるものではなく、
立ち上げる時から始まっている。

私は、そう感じています。

「内部実践者」と「外部支援者」の役割と関係を考える
~持続の土台づくりをする経験・ノウハウの共有

企業の方々と一緒に着手する立ち上げ段階には、まだ「この会社では、どう進めればうまくいくのか」という最適な答えはありません。
そこで大切になるのが、企業で組織開発を担う「内部実践者」と、外から支援する「外部支援者」の関係です。

内部実践者には、組織の中にいるからこそわかる情報や感覚があります。事業や仕事、歴史、文化、人間関係。誰に働きかければ動きそうか。逆に、どこで、どんなことにつまずきやすそうか。
一方、外部支援者には、少し距離を置く第三者だからこそ見えることや、多様な企業組織での支援経験、専門的な知見があります。

これを互いに持ち寄り、「この活動は、何のためにやるのか」「この会社では、どう始めるのがいいのか」「どんな順番で進めるのか」「誰を巻き込み、どこを任せるのか」など、本気で本音の対話をしながら、その組織なりの進め方を一緒につくっていく。
お互いを生かし合う協働の信頼関係で、呼吸を合わせてスタートすることが大切です。

地に足を付けて、一緒に考えていく。ともに組織を見立て、ともに考え、ともに試してみる。そして、うまくいかなかったこと、やってみてわかったことなどをふり返り、その先の進み方を一緒に決めていく。
こうした立ち上げ期のプロセスにある体験や学習が、内部実践者に“不確実なプロセスを扱う”身体経験やスキルをもたらし、「自分たちで組織をよりよくしていく力」につながっていくのだと思います。

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住友重機械工業では、どう立ち上げたのか

10月26日の〈大企業変革事例セミナー〉では、PRIDE PROJECTを立ち上げ、現在も各事業部門の組織開発を支援している住友重機械工業の森麻子さんをお迎えします。

「誇りを持って働ける職場」をめざして2020年からスタートした住友重機械工業の組織開発活動「PRIDE PROJECT」。そこでも、推進部署である「組織開発グループ」との間に最初から進め方の形があったわけではありません。

「何のための活動なのか」「誰が旗を持ち、どう職場を巻き込むのか」「活動事務局はどこまでやり、どこから現場に委ねるのか」「外部支援者であるスコラ・コンサルトは、どこで前に出て、どこで引くのか」など、住友重機械工業の内部実践者とスコラ・コンサルトが一緒に考え、試しながら、進み方のプロセスをつくってきました。

そして進行中の現在も、完成された「型」があるわけではありません。
活動が広がり、エネルギーのレベルが上がれば内部実践者と外部支援者の役割も変わり、活動事務局の職場への関わり方もまた変わっていきます。人の思いや熱意に導かれて生成するプロセスは、たえず柔軟に変化し続けるのです。

「変革を進める」から「変革できる組織を育てる」へ。
そのために、立ち上げ期には何を考え、何を仕掛けておけばいいのか。
セミナーでは、住友重機械工業とスコラ・コンサルトの現在進行形の実践を通して、皆さまと一緒に考えてみたいと思います。

これから組織開発を立ち上げようとしている方、活動を始めたものの「なかなか自分たちの活動になっていかない」と感じている方も、ぜひ参加ください。