エンゲージメント(Engagement)とは約束、契約、婚約、関与、従事といった意味の英語です。ビジネスの場面ではマーケティングの分野においてしばしば使われる言葉でした。顧客が企業の製品・サービスに共感して積極的に購入/利用したり、他の人に推奨したり、アイデアや要望を提供してくれたりするなど、企業と顧客が継続的に深い関係で つながることをカスタマーエンゲージメント(Customer Engagement)と呼びます 。

一方、組織・人材の分野におけるエンゲージメントは、組織と従業員が 継続的に深い関係でつながることを意味します。組織と従業員は対等な関係であり、組織は従業員に対して働く上での環境を提供しますが、従業員もそれに応えて仕事や組織に積極的に貢献するという双方向的な考え方です。従業員エンゲージメント(Employee Engagement)と呼ばれることもあります。

エンゲージメントと似たものに従業員満足がありますが、これは会社が与える環境や条件に対する従業員の満足状況に焦点を当てています。顧客満足のように従業員を「お客様」と見なした際に、会社は十分な環境や条件を提供できているかという一方向的な関係で捉えているとも言えます。

エンゲージメントは、仕事に対する関与と、チームや組織に対する関与という2つの要素で説明されることがあります。前者に近いものは「ワークエンゲージメント」と言われ、「仕事に関連するポジティブで充実した心理状態」と学術的に定義されています。そのため、「(従業員)エンゲージメント」と言う場合は、仕事に対する関与に限らない、チームや組織に対する関与も含めた広い概念と捉えるとよいでしょう 。

「(従業員)エンゲージメント」の定義は明確に定まっているわけではありませんが、おおむね次のような事柄の 影響を受けて向上したり低下したりすると言われます。
▶ 仕事への誇りを 感じて意欲的に仕事に取り組める状態(≒ワークエンゲージメント )
▶ 組織のビジョン・戦略(組織が目指す方向性)への共感
▶ 組織の文化・価値観との一致感
▶ 上司やチームメンバーとの心理的安全性や 協働関係
▶ 働きやすい制度や環境の充実度(評価制度や処遇、福利厚生、キャリアデザイン、裁量の大きい仕事スタイル、ワークライフバランスなど)

また、エンゲージメントサーベイでは、これらの項目の上位に置く総合指標として「自組織を勤め先として推奨できるか」、「今後も働き続けたいか」を設問することがあります。エンゲージメント指標が良好な組織では離職が少なくなり、従業員が主体的に創意工夫や連携を図ることで、生産性や業績が向上する可能性があります。そして、従業員が自社の製品・サービスに愛着や自信を持つことはカスタマーエンゲージメントの促進にもつながり、事業成果も 生まれやすくなるという好循環が期待できます 。