心理的安全性とは

心理的安全性とは、チームがめざすことの実現や直面する問題の解決に向けて、メンバーが率直に発言し、情報や知恵を出し合い、試行錯誤やチャレンジが安心してできるようなチームの状態や職場の環境のことです。

複雑、不確実で正解が容易に見出せないVUCAの環境下では、多様なメンバーが情報や知恵を出し合い、仮説を立てて試行錯誤を繰り返しながら最適解をつくりあげていくようなチームワークが求められるようになってきました。                                そのようなチームワークの必要条件となるのが、心理的安全性です。

心理的安全性は、「居心地の良い職場」「仲良しクラブ」「互いのことには口出ししない関係性」といったような「ぬるま湯的」であったり「波風を立てない」安定的な職場の状態ではありません。                                                      むしろそれとは逆に、チームがめざすことの実現や直面する問題の解決に向けて、「必要なことは言う、行う」「一緒に考える」「協力する」といったことが良しとされているポジティブでアクティブな職場の状態です。

心理的安全性という概念は、1960年代半ばに組織開発の文脈でエドガー・H・シャインらによって示されていましたが、ハーバード・ビジネススクール教授のエイミー・C・エドモンドソンが効果的なチームにとっての心理的安全性の重要性を発表後、2012年グーグルのアリストテレス・プロジェクトによってチームのパフォーマンスに心理的安全性が最も影響を与えているという実証結果が発表されたことで、日本でも注目されるようになりました。

心理的安全性の高い組織が高いパフォーマンスを生み出す背景には、多様性の尊重、ワーク・エンゲージメント、生産性、メンタルヘルス、離職意向などとの関連性が考えられます。

心理的安全性の高いチームをつくるには

エドモンドソン教授は、心理的安全性の低いことで現れる要素とその代表的な行動として、以下の4つを挙げています。
(1)無知だと思われる不安(Ignorant)…質問をしなくなる
(2)無能だと思われる不安(Incompetent)…自分の弱みやミスを認めなくなる
(3)邪魔していると思われる不安(Intrusive)…アイデアを提案しなくなる
(4)否定的だと思われる不安(Negative)…現状を批判しなくなる

このような不安を抱えた心理的安全性の低い職場では、多くのメンバーが上司や他のメンバーに対して「発言や行動がもとで不利益を被るのではないか」「どうせ言っても無駄」「はしごを外される」などといった警戒心や恐れを抱いています。

そのような職場を心理的安全性のある職場を変えていくためには、どうすればよいのでしょうか。個人として取り組めること、チームとして取り組めることの一例をご紹介します。まずは一人ではじめられることからトライしてみましょう。

≪個人として取り組めること≫

(1)挨拶をしっかりする。
(2)「ありがとう」と感謝を伝える。
(3)失敗を学習の機会として前向きに捉える。
(4)自分が間違えたことを素直に認める。
(5)好奇心を形にして、積極的に質問する。

≪チームで取り組むこと≫

(1)対話の場を重ねることで、このメンバーだったら自分の話を聴いてくれる、受け止めてくれる、協力してくれる、というメンバー相互の信頼感を醸成する
(2)チームが目指していることや直面している問題についてメンバー間で認識を共有する
(3)チームで目指すことの実現や直面する問題の解決のために、情報や知恵を出し合ったり、試行錯誤やチャレンジしたり、それをサポートすることが是であるという価値観や規範をチームで共有する
(4)これらを促進するマネジメント(相互理解を深める対話の場づくり、目的や直面する問題の明示、貢献的な発言や行動の評価)を行う

【参考文献】
『わたしからはじまる心理的安全性』塩見康史、なかむらアサミ著 翔泳社
『恐れのない組織』エイミー・C・エドモンドソン著 英治出版

【関連リンク】
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