売り手と買い手との関係が変容した今日では、「お客様第一」という考え方そのものについては誰もが重要だと考えるようになり、これを経営方針に掲げる会社も少なくありません。ところが、多くの場合、その「お客様第一」を抽象的な概念のまま方針としてただ掲げているだけのように見えます。お客様にそれが伝わり、実際に価値として感じてもらえるような具体的な活動にまで落とし込めている会社はきわめて少数ではないでしょうか。

課題を落とし込む転換プロセス

自分たちのめざすものが抽象度の高いコンセプトにまとめられている、このような場合には、「いかにそれを日常業務に結びつけていくか」「どうやって日々の行動に落とし込んでいくか」といった具体化のための転換プロセスが不可欠です。
そこで、あらためて自分たちの仕事を「お客様の側に立って」じっくりと見直してみると、接点となる一人ひとりの接し方や仕事のやり方だけではなく、組織として定型になっている業務の流れや仕組み、システム、さらには会社としての営業スタイルやマネジメントのあり方までもが、新たな課題となって浮上してくることがあります。

しかし、大きな課題になればなるほど、個人レベルでの解決というのは難しくなっていきます。そのような課題への取り組みにおいては、組織のトップが目に見えるかたちで先頭に立ち、「何をおいても、お客様第一だ」という価値観に立った仕事のしかたを社員とともに実践する、という強い意思を示していなければ、現場の社員はとても動こうという気にはなりません。
さらにいえば、その姿勢を明確にするだけではなく、“方針と個人の行動をつなぐためのプロセス”を強く意識して、それを公式なかたちで後押ししていくことも必要です。
それがなければ、結局、方針と個人の行動は分離してしまい、実態としては「目先の数字という具体的なもの」のほうが優先されていく、というダブルスタンダードになってしまうのです。

成果目標から行動目標へ

そうならないためには、「お客様第一」を考え方として共有することにとどまらず、そのために自分たちは何をするのかという課題を具体化するプロセスとしての話し合いに徹底してこだわり抜くことが大切です。そのうえで個人の業務目標を、今までのような売上だけに成果を求めていく数値目標から、新たな課題を実現するために個々が知恵を絞った行動目標に変えていく。
このようなプロセスを踏んだ目標設定があってはじめて、社員が自らの意思で実現しようと目標に向かっていく、「自分のものとしての実行」が生まれてきます。

だからこそ、結果としての「業績」が必ずついてくるのです。