スコラ・コンサルトは、プロセス型コンサルティングによる組織風土改革のパイオニアです。

03-5420-6251 ご相談窓口 平日9:30~18:00

メールニュース講読 お問合せ・ご相談

今の日本と日本企業に一番欠けているもの
~なぜ意味・目的・価値を考える習慣が大事なのか

2017年01月12日

昨年末、ある雑誌の取材を受けたときのこと。拙著『なぜ会社は変われないのか』(1998年刊)を読み直してきたという記者の方の質問は、「今も企業では20年近く前に書かれたこの本と同じようなことが起こっている。ということは、日本の会社が抱えている体質的な問題は何も変わってないのか」でした。

『なぜ会社は変われないのか』が今もなお読み続けられているのは、日本企業が当時と変わらぬ体質を抱え続けていることを示しています。


ただ、今回の電通のような事件が、もし1998年当時に起こっていたとすれば、はたして強制捜査にまで至ったでしょうか。
過労死や勤労者の自殺の多さは以前から話題になることはありました。
しかし、社長を引責辞任に追い込むまでの大きな社会問題になることはなかったのです。

そういう意味で、当時と今とでは社会が持つ感覚に明らかな違いがあります。「人間を主体とする考え方」はビジネスの世界でもしだいに違和感なく受け止められるようになってきています。電通問題で顕在化した、若い人の自殺が起こり続ける日本の現状、それを時代の空気は簡単には許さなくなってきている、ということだと思います。



今回のような事件、そして亡くなった高橋まつりさんの死をむだにしないで、日本を変えていくきっかけにするために必要なこと、それは、この問題を「長時間労働の問題」に矮小化させないことです。

問題の本質に迫る、つまり日本が抱える、そして欧米先進国との格差を引き起こしている“体質的生産性の低さ”の問題に迫ることが必要なのです。


この問題が人員増だけでしか対応できないものだとするなら、「コストをかけないと解決しない問題」になります。もし、労働時間制限と人員増というコスト増の解決策しかなければ、当然、収益との綱引きが起こります。収益が下がり、競争力の低下が問題になるのです。結果として、たぶん中途半端な解決にしか行き着かないでしょう。


長時間労働は、周りから持ち込まれる課題を右から左へと片っ端からさばき、こなすのが当たり前になっている仕事の仕方(=体質的生産性の低さ)から必然的に生じます。欠けているのは、降ってくる課題に優先順位をしっかりとつけて必要な仕事だけをする、という習慣です。

というのも、本当に時間と労力を注がなければならない重要な課題というのは全体の2割程度しかない、と言われているからです。他はやらなくても同じ、もしくは簡略化することが可能な課題です。

そうであるなら、戦略的な全体観のもと、優先順位をつけて仕事をする能力を身につけていけば、仕事は整理され、結果として生産性は格段に上がり、長時間労働も減らすことが可能になるのです。


問題は、優先順位をしっかりとつけるには「物事の意味や目的・価値」などを掘り下げ、戦略的な全体観を創り上げる力が不可欠であり、現状ではその能力を持つ社員はきわめて少ない、という事実です。
今の日本に一番欠けているのはまさにこの能力です。ここに焦点を当てて、あらゆる施策をまず打たなくてはなりません。


なぜ日本にこうした大切な力が不足しているのか。

それは、経済の高度成長を成し遂げてきた企業の体質が「上からの命令には絶対に従う、下には絶対に従わせる」という原理に長きにわたり支配されてきたことに起因しています。

こうした原理をいつも踏襲していると、社員はただ指示されたことをいかにして実行するか、だけしか考えられなくなるのです。今の日本で、しっかりとした組織で働く人間ほど考える力を失くしているのはそのためです。


そもそも、つい最近まで産業界から教育界に対し、「意味や目的・価値などを考えて仕事ができる人材」に対する要請はありませんでした。

戦後の日本の教育では常に知識の習得に重きが置かれ、物事の本質に迫る力を培う教育は置き去りにされてきたのです。この点が欧米先進国の教育と決定的に異なる点です。
欧米先進国と日本との生産性の格差はまさにここからきている、という認識が必要です。


私たちが手がける風土改革では、本当の意味での「人を育てる」ことが主要なテーマです。改革のキーマンたちに、意味や目的や価値などをまずしっかりと考える習慣が身につくような環境を用意するのはそのためなのです。

柴田 昌治

柴田 昌治(しばた まさはる)

80年代後半から企業風土・体質改革のコンサルティングに取り組む。 変化を妨げている価値観を変えながら変革のプロセスをつくり込んでいく「プロセスデザイン」というやり方が特徴。

詳細

  • メールニュースのお申し込み