どんな仕事も、自分の仕事への“関わり方”で面白くできるもの。ワクワクするような仕事は、待っていてもやって来るものではありません。むしろ、自分が「面白い」と思うことをもっと掘り下げて、これなら自分は夢中になれる、という状態を知ることをオススメします。

上司に言われたことをこなすことだけが「仕事」ではない

私はスコラ・コンサルトの課外活動として行なっている〈エンジニアLink(リンク)〉で、20~30代の若手エンジニアの「面白い」を見つけるお手伝いをしています。
https://www.facebook.com/engineerlink/

活動を通して腑に落ちたのが、ここ10年くらいの入社の若手メンバーが思った以上に安心・安全志向なこと。たとえば、20代の女性が「エンジニアLinkでいろいろな方とお話しする前は、上司にOKをもらえるように働くのが仕事だと、無意識に思っていたことに気づきました」と話してくれたことがあります。このことを「数時間の対話で気づく認識力がスゴイ!」と思う一方、組織の中では、自分の意思で何かをするより、上司から言われたことだけを仕事と認識しがちな現実がある、と実感しました。

 

管理職世代と若手世代との間に、溝があるとも感じています。若手が「上司の言われたとおりにやることが仕事」と思いがちな一方で、上司である管理職のほうでは「若手が何に興味があるのかわからない」「もっと積極的に動いてほしい」と考えているのです。

結果的に、管理職が部下の自発性を求めて指示しないでいると、「上司がつまらない仕事しか与えてくれない」と不満を感じる若手メンバーが増えていく…、これはお互いにとって、かなり不幸な構造ではないでしょうか!?

面白いことは待っていてもやって来ない

ここで少し自分の話をしてみます。
「面白いことは、自分でつくるもの」。私はこのことに、20代後半で気づくことができました。

製造小売業で販売の仕事をしていた頃のことです。店舗で働く人に向けて、商品を売場で展開するための指示書(展開書)作成を担当したことがありました。当時、本部への異動直前まで店舗勤務だった私は、「お店が困っていることを解決するために本部で何ができるのか」を知りたくて、日中、他部署をウロウロと回り、定時後に仕事を終わらせるという、今では決して褒められないサイクルで仕事をしていました(笑)。初めての本部勤務、何がどこでどう決まるのか、理解したい気持ちもありました。

「なんで、太田には面白い仕事が来るの?」

ある日、同じ仕事をしている5歳ほど上の先輩から、いきなり不機嫌そうに質問されました。その時の私の認識は「仕事が面白くないことはないけど、正直、面白いという自覚もない」というもの。

 

この先輩からの問いが、「面白い」とは何かを考えるきっかけになりました。「同じ業務をしているはずの先輩と私なのに! 何が違うんだろう?」。ちなみに先輩は、ずっと机に座って、分析で詰めていくタイプでした。

先輩との違いを考えた私は、自分が「どうやったらお店の人が『売る』という仕事に面白がって取り組めるか」を考えて展開書を作成するのを“面白がっていた”ことを発見しました。

秋には「肌寒いと感じたらカーディガンを前出し、あなたが温度計」。

バレンタインには「あなたがキューピッドです!」。

営業会議で失笑を買いつつ、自分なりに考えて仕掛けていました。業績が厳しい中でも「展開書のひとことで気分が変わって、何かやろうと意欲的になる人もいるんじゃないか」「結果の売上だけを見て鬱々とするのではなく、お客様を見て何かやってみようよ」という気持ちでした。「何かやってみよう」と人の気持ちを動かすところ、相手にとって意味のあるところに自分のオリジナリティを出せないかと考えていたのです。

私には、「それでほんとにコトが動くのか?」と問いを立てる思考のクセがあります。それにしたがって、手ごたえを得るための回路を自分なりに増設して仕事をしていたことに気づいたのが、その時でした。

「展開書作成」の業務フロー

各商品部から出てきたテーマをとりまとめる
⇒店舗向けの展開書をわかりやすく作成する
⇒その展開書に各部長から承認をもらう
⇒印刷して全店に流す

業務フローと並行して考える意味のフロー

「展開書作成」という仕事のお客様は店長や売場の人

売場の人が面白がって工夫して、前年と何か違うことをするようにしたい(何かを変えないと、今のトレンドでは売上を変えられない)

展開書を「いつものが来た」でなく、自分でやってみたくなるようなものにする

お店で売場スタッフがお客様を観察して、動いてくれるようになったら最高

その行動はお客様を動かす・・・に違いない!

こんなふうに私は、業務フローの奥にある「意味のフロー」に着目して、仕事に取り組んでいたと言えます。ただし、周囲の人にとっては、「何をやっているのかわからない」「あれこれと余計なところに手を出している」ようにしか見えなかったことでしょう。

また、社内を歩き回りながら、意図せず「自分にとって面白い仕事」や「自分が必要だと思う仕事」をつくっていたことにも気づきました。今思うと、課題を拾いに行って面白がって取り組む私と、決まった仕事を着々とこなす先輩との違いだったのですね。

つまり、自分はどんなふうに考えて仕事をするのか、「仕事との関わり方」ひとつで、仕事が面白くもなるし、つまらなくも感じる。仕事が面白くなる構造って、実は、捉え方ひとつなのではないでしょうか。自分の感じる仕事の面白さをつかむことができれば、その面白さを生かしながら、仕事を再構成できる。それを発見できれば、その意図をもっと先鋭化できます。

みなさんも、自分の仕事を「面白い仕事」にしていきたい、ですよね。

その「面白い」は、人によって異なるため、一度自分に「何が面白いのか?」を問うことが大切です。「面白い」を探すヒントは、自分が「何にワクワクするのか」にあります。

ワクワクの見つけ方 ~自分に質問をしてみよう

まずは、あなた自身の「ワクワク」を見つけるワークをやってみましょう。
大きめの付せんを用意して次の「問い」を書き出してみます。
図1は、実際に出てきたことがある回答例です。

1.子どもの頃の夢は?
2.学生時代に夢中になってやったこと
3.仕事で人に誉められること
4.自分の中で盛り上がっちゃう仕事 ※ついつい夢中になる!

誰かとペアを組んでやってみるのがオススメです。経験則ですが、3~4人のチームより、1対1のほうが安心して話せるためか、ワクワクを見つけやすいことがわかっています。

付せんに書くことを、難しく考える必要はありません。
「昔話を聞くのが好きだった」「学生時代にたいやきを食べるのに夢中だった」といったことも、大事なワクワクになります。

完璧な「ワクワク」を見つけようとするあまり、書けなくなってしまう人もいますが、気楽に「これって、私のワクワクかも」程度でどうぞ。一度、言葉にしておくことで、ワクワクを育てることもできます。

 

付せんが書けたら、ペアで共有しましょう。聞き手は「いつ、何をするときに、最も盛り上がるのか」「そのときに大事なことは何か」と具体的に聞いていくことが大切です。

「感情が動いているのはどこのポイントか?」を意識して相手の表情を見てあげてください。感情が動いていそうなポイントがあれば、そこを深く掘り下げて「ワクワク」を探していきます。

 

参考までに、若手エンジニアのワクワクをご紹介すると、

1.ここじゃないか!? という問題を発見すること
2.現場で修理するときに、どうやったらうまくいくか考えること
3.大きいもの(山とか、橋とか)
4.つくったものが動く瞬間

などなど、いろんなワクワクがあるのです。正解はありません。

 

◎特定した「ワクワク」を今の仕事に活用するポイントを考える

掘り下げてみて「自分のワクワク」が見えてきたら、今度はそのワクワクを「現在の自分の仕事の中でどう生かすか?」を考えてみましょう。仕事とはいろいろな工程のかたまりです。ある一工程だけを見てつまらない、と決めてしまうのはもったいない。仕事のどの工程で自分のワクワクが生かせそうか? ぜひ言葉にしてみてください。

自分が何に面白さを感じるのかをつかみ、言葉にできれば、それを今の仕事に生かすことで、仕事は面白くできます。
仕事の中で、自分で自分をご機嫌にすることができるのです。

面白く働く一番の近道は、自分で今の仕事を面白くすること

今ある仕事を急に変えるのは難しいでしょう。また、変えたところで、やはり面白くないかもしれません。面白く働く一番の近道は、企業や部門の方向性に乗った上で、そこにいかに「自分の面白さ」を入れるのか、を考えることなのです。

会社のためだけに働くのではない。とはいえ、会社を無視して自分のためだけに働くのでもない。小さくても、自分で面白さをつくりだす働き方こそ、全体(企業の方向性)と個人(自分のワクワク)を掛け合わせた新しい働き方だと考えています。

自分の中にきっとある「ワクワク」を、ぜひ探してみてください。自分の感じる仕事の面白さをつかむことができれば、その面白さを生かしながら、仕事を再構成できる。
その意図をもっと先鋭化できるのです。