名古屋鉄道(以下、名鉄)の系列会社であり、電気・通信工事を主とする名鉄EIエンジニア株式会社(旧 株式会社メイエレック)は、2015年6月の清水良一社長の就任をきっかけに、全社員を巻き込んだ風土改革を展開している。

2018年の創立15周年に向けてのGrowing Innovation Project(略称GRIP15)の立ち上げに始まり、GRIP15の推進メンバーが案を練った社員全員へのアンケート、アンケート結果のフィードバックのためのオフサイトミーティング、そこから出て来た課題の見える化(氷山図の作成)、課題解決プロジェクト、ビジョンと行動宣言の作成、総務部による全社員面談など、わずか1年半の間にさまざまな企画が実施された。

同社のこれまでの風土改革は、キーパーソンの活用、課題を明確化して社員に当事者意識を持たせる仕組み、情報共有の3つの要素が大きな鍵となっている。第2回はその具体的な内容を紹介する。

思いのある社員を風土改革のキーパーソンに

清水社長は電気や通信といった名鉄EIエンジニア(旧 メイエレック)の業態についての業務経験がなく、社内の状況を把握して経営を進めるには、自らの思いを受け止めて力になってくれる社員が必要だった。そこで、課長以上の社員と面談の時間を取り、そのときの感触から、現・総務部長の植木伸一さんと現・取締役社会インフラ事業部長の篠田秀雄さんに白羽の矢を立てた。

植木さんは名鉄の労働組合の支部長として活動していたときに、名鉄EIエンジニア(旧 メイエレック)社員は外とのつながりが少ない会社という印象を持っていたと話す。その印象が残ったまま、2011年に名鉄EIエンジニア(旧 メイエレック)に移籍。当時を「合併前の派閥が根深く残り、社員は“平穏無事な会社生活”が大事で、変わることに抵抗が強いと感じました。この会社を何とかしなければという正義感みたいなものがあって、気合いが入っていましたね(笑)。ただ、来てすぐにがんがんやるわけにもいかなかった」と振り返る。

一方、篠田さんは名鉄から名鉄EIエンジニア(旧 メイエレック)の前身の名古屋電子エンジニアリングへ出向し、また名鉄に戻って、名鉄EIエンジニア(旧 メイエレック)には創業時から在籍する古参社員だった。「営業畑が長かったこともあって、植木同様、外との接点がいっぱいある。この2人に知恵を借りるのがいいと思いました」(清水社長)。

そこで、清水社長は植木さん、篠田さんの2人にGRIP推進メンバーの選任を依頼。2人は当時営業部だったこともあり、清水社長の就任前から互いをよく知っていた。清水社長からの依頼を受け、2人で相談しながら、メンバーを部課長クラスから7人を選任(植木さんと篠田さんも含む)。この推進メンバーの中には、当初やらされ感のある人もいたが、徐々に自ら自己変革を遂げながら、推進チームとなっていくこととなる。

清水社長はGRIP15の推進メンバーには業務時間内の活動を許可し、時折ミーティングにも顔を出した。「社長には会社の方向性への明確な考えがありましたが、GRIP15が組織され、メンバーが社長の思いを体現していくのを見て、トップダウンではなくGRIP15と一緒に社員の変化を待つ姿勢に変わったと思います」と植木さん。風土改革には社長のコミット度が高いことが不可欠だが、名鉄EIエンジニア(旧 メイエレック)のような系列企業や小規模企業では、その効果は大きいと言えるだろう。

総務部の井上美代さんも風土改革を進める大きな力となった。井上さんは名鉄の人事部から名鉄EIエンジニア(旧 メイエレック)の総務部に出向し、現場で100人規模の庶務を担当。清水社長が命じた総務部による全員面接では約80人に会った。総務の観点から社内を見渡せる貴重な人材だ。

風土改革が始まってからは自身の閉塞感も解き放たれたと言う。「以前はこの会社の人たちはなぜ自ら動かないのかが疑問でした。今はそういうことをみんなの前で言えるようになって、すっきりしています。周囲の人たちは私がしゃべるとバッサリと刀を振られると身構えていますが(笑)。私も“また言ってしまった”とは思いながらも、本心ですし、陰口も好きではないので」(井上さん)。

井上さんはGRIP15の第1期のコアメンバーであり、第2期の推進メンバーでもある。「去年と同じことをするのではなく、1年1本勝負のつもりでエネルギーを注ぎ込んでいます。ただ、私が出過ぎて“井上さんがやってくれるから”という状態は避けたいので加減しつつ。響く人には響くだろうと思っています」(同)。

 

図1名鉄EIエンジニア社(旧 メイエレック) 風土改革の流れ