神奈川県の北西部、山梨県との県境に位置する自然とアートのまち・藤野に移住してちょうど3年になります(前回、本コラムに藤野の記事を書いたのは移住後半年の頃でした)。

Fujino(藤野)での暮らしから得る学び ~自発的なオープンネットワーク

気候変動に対して、自分たちからできることを考える

ところで、先月下旬に首都圏で積雪がありました。11月としては「何十年ぶり」というすでに耳慣れたフレーズでの報道でしたが、異常気象はもう「日常的」になってしまったようです。しかしながら、生活者の多くにとっては、身近で気候変動が起きていることはわかっていても、自分たちが暮らす地域で何か手を打たなくてはという視点には、なかなかなりにくいようです。自治体でもしっかり対応策を講じているところはそう多くはありません。

 

ここに問題意識を持ち、気候変動と地域を結び付ける調査・研究活動をされているのが、法政大学・サステイナビリティ研究所の白井信雄先生です。そして、藤野でも、私が理事を務めるNPO法人ふじの里山くらぶとの協働事業として「気候変動の藤野学」という活動に今年から取り組んでいます。

地域住民から参加者を募り、それぞれが感じている気候変動の地元における影響事例をまず集めます。その上でワークショップを行ない、いま何が起きているのか、これから心配されるのはどんなことかを明らかにしたり、自分たちからできることを考えて実践しようというものです。自力でやり得ないことは、行政や政治を巻き込んで、策を考えていく予定です。

豊かな自然に囲まれた中山間地ですから、影響事例としては必然的に、集中豪雨による土石流や鉄砲水の発生、沢の崩壊といった自然災害の増加とか、鹿・猪・猿などによる農作物被害の増加や熊の出没といった自然生態系の変化に関するものが多く出てくる傾向にあります。次回ワークショップは、年明け(1月22日)を予定しており、藤野における気候変動の影響を重大性/緊急性/確実性の各観点から評価して、全体像をつかみ、これからの取り組みに優先順位をつけようという場になります。(見学をご希望の方は、ご連絡いただければ喜んでご案内します!)

貨幣経済だけではカバーしきれない部分を、異なるサブシステムで補う「社会実験」

私は、「プロセスデザイナー」として、この藤野という地域でも地域づくりの“創発”にかかわりたいとあちこち動き回っています。その背景には以下のような想いがあります。

お金があれば豊かに生きることができるという貨幣経済におけるある種の幻想が、さまざまなところでほころびを見せ始める中、国や自治体も、企業も、この潮流の先にある大きなビジョンを描けていないようです。ならばというわけで、ここ藤野では市民が主体になり、貨幣経済だけではカバーしきれない部分を、異なるサブシステム(われわれのコミュニティでは、貨幣経済=かせぎ、贈与経済=つとめ、自給経済=くらしという経済3態の上手なバランスを指向しています)で補う「社会実験」をしているとも言えましょうか。

実は、国の中枢で働く人の中にも同様の考え方を打ち出している人(総務大臣補佐官・太田直樹氏)がいらっしゃることを知り、意を強くした次第です。
総務大臣補佐官・太田直樹氏

 

次回本コラムを書くときには、環境に配慮した持続可能な生活や地域のつながりを目指すライフスタイル研究所「廃材エコヴィレッジゆるゆる」(地元のアーティストがリーダーとなり、廃工場だったところを、仲間たちでDIY的にリノベーションしながら、地域通貨も導入しつつクリエイティブなコミュニティスペースを創っています)のご紹介をさせていただきたいと思っています。