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企業文化を変えずして、働き方改革は進まない(前編)
~なぜ、25年間も長時間労働問題はなくならないのか~

2017年06月30日

 

今年3月末、政府は「働き方改革実行計画」を発表しました。働き方改革は、一億総活躍社会の実現に向けた最大のチャレンジと位置づけられており、その内容に注目が集まっています。
みなさんの会社ではどんな働き方改革がなされているでしょうか?

じつは働き方は、企業文化と密接な関係にあるものなのです。


●なぜ、25年間も長時間労働問題はなくならないのか?


働き方改革では、非正規雇用への処遇改善、子育て・介護などとの仕事の両立など9つのテーマでの取組みが進められています。その中でも「長時間労働問題」と「生産性向上」の2分野は、雑誌やWebで取り上げられ、その対策について語られることが多くあります。この2つは、いわば二大巨頭とも言うべき、企業に長年はびこる難攻不落の課題です。


先日、前職で人事をしていた時の後輩と久しぶりに会った際にも、この話題になりました。彼曰く「どうすれば長時間労働を変えることができるか?」は、25年前の人事担当者研修でも取り上げられていたテーマだったと言うのです。つまり25年間、フレックス制度や裁量労働制の導入や、残業規制などのさまざまな施策を打ってきていても、働き方の実態はほとんど変わっていないのが現実です。


たとえば、残業規制。単に「残業時間を週に何時間減らしてください」といった人事部からの通達だけでは、「なぜ残業が発生しているのか」という根本的な原因を問わぬまま、対処療法的な総量規制を強いているだけなので、現場の反発や「やったふり」対応を引き起こすだけで、結果として失敗に終わってしまっているのです。

では、どうすれば現場の反発や「やったふり」対応を引き起こさずに働き方改革を進めることができるのでしょうか。その対策への鍵になるのが、仕事の作法、習慣、価値観などの「企業文化」です。


●企業文化こそが本質的な問題


企業文化は組織のシステム全体に大きく影響しています。
下の図は、組織のシステム階層構造を氷山にたとえて示したものです。

氷山図

 

よく課題への対策としてなされる制度変更は、目に見えやすい氷山の上の部分、すなわち「ハード面」の対策になります。

確かに、ハード面での「経営方針」や「仕組み・制度・組織体制」「業務プロセス」の対策も必要なのですが、文字どおりこれらは、氷山の一角にすぎません。

氷山の大部分を占めるのは、水面下にあって見えにくい部分にあたる「ソフト面」で、一般的には、企業文化(=組織風土=組織OS)と呼ばれているものです。この中には、「思い・意志」「価値観・理念・哲学」「判断・行動特性」「チームの動き方」などが含まれており、この企業文化はハード面のしくみ・制度や業務プロセスなどの運用面、現場での実行に大きく影響しています。

つまり、たとえハード面だけをいじっても、企業文化が変わらない限り、また元の状態に戻ってしまうのです。

新人社員の自殺原因が過労にあったと労災認定されたことで、昨年末、電通は残業時間を短縮する施策や、2017年からの社員手帳には長年行動規範とされていた「電通の鬼十則」を記載しない方針を打ち出しました。

過激な表現に焦点が当たり話題になった「電通の鬼十則」。ここには昭和26年当時の電通マンに求められた「モーレツ社員のプロ根性」について語られています。事件が起きた根本にある問題点は「電通の鬼十則」を社員手帳に記載しない、という対処療法的な措置では解決できないでしょう。

 

近年、若い世代の一部で「時間を忘れて仕事をすることがプロ」であるという価値観が広がってきてはいますが、66年も前の「モーレツに仕事をすることが美徳とされる価値観」が企業の中に存在し続け、会社も社員もそれに縛られている限り、電通の仕事の仕方、働き方は変わらないと私は考えています。

ほかにも、上司の言動を「忖度」するのが優秀の証であるといった価値観が、上司の指示や意図を確認しないまま良かれと思ってやってしまう余計な仕事や、無駄な仕事を生み出しています。

また、「残業代で生活費を稼ぐ」という働く側の考え方や、仕事の質とは関係なく「長時間働いていることが頑張っていること」などといった、昔ながらの価値観はいまだに多くの日本企業に根強く残っています。


●価値観は「仕事の仕方」にも強く影響している


企業文化を構成する要素の中でも「価値観」は、どのように「仕事の仕方」に強く影響するのでしょうか? 
仕事の仕方には、現場の一人ひとりの動き方から会社全体の仕事のシステムまで、下の図に示すような範囲があります。

仕事のシステム


この中で、企業文化(=価値観)の影響が強く出るのは、「暗黙のルール」「判断・行動基準」「共有価値観」や「個人の動き方」と、「チームの動き方」です。これらが次の「作業標準」や「業務プロセス」に影響します。

たとえば、人事部が提示してくる残業時間短縮などの施策は「経営的な“働き方改革”の対象」の範囲での施策でしかありません。この範囲で「働き方改革」を済ませようとすると、今までの企業文化がそのまま手つかずで残っているので、結果として、経営層や人事部の思惑とは裏腹に、残業時間は減らず、生産性の向上も果たせないのです。

つまり、「暗黙のルール」や「判断・行動基準」「共有された価値観」が変わらないと、職場における日常の「個人・チームの動き方」や、それに伴う「仕事の仕方」は変わっていきません。企業文化として受け継がれ、共有されてきた仕事の仕方が変わらない限り、残念ながら働き方は変わらないのです。

だからこそ、長時間労働問題や生産性の向上は、25年経った今でも解決できていない課題として残っているのです。


●働き方改革を実現すべきいまこそ、企業文化・風土改革を


企業文化にまで手をつけないと、働き方は変わりません。
では、どうやれば企業文化を変えていくことができるのでしょうか?
次回のコラムでは、企業文化を変えるアプローチについて、そのヒントを紹介したいと思います。

 

三好 博幸

三好 博幸(みよし ひろゆき)

体質問題を、「風土・体質=組織のソフトウェア」という観点から構造化し、大組織の変革をシステマティックに展開していくアプローチの開発に取り組む。

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