部下の成長を促す上司の関わり方 <br/>~自分の経験を部下の学びの「踏み台」にする|コラム|スコラ・コンサルト
部下の成長を促す上司の関わり方 <br/>~自分の経験を部下の学びの「踏み台」にする

部下の成長を促す上司の関わり方 
~自分の経験を部下の学びの「踏み台」にする

太田 久美 | 2019.07.11

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部下の成長を促す上司の関わり方 <br/>~自分の経験を部下の学びの「踏み台」にする

「人が育っていない」
こんな声を私が変革のお手伝いをしている企業でよく耳にします。しかも、ここ3年くらいは加速度的に聞く機会が増えているように感じます。

「人が採用できない」も同様です。
業種業態や企業規模によって、採用が途絶えた「断絶」のある年齢層は異なりますが、各年代をバランスよく採用できていた80年代以前と今とでは、職場の状況が大きく変わっています。

日本全体が人手不足の厳しい状況の中で、やっと確保できた人材ですから、「今いる人財を何とか成長させたい…」というのがミドルマネジメントの多くに共通する思いではないでしょうか。

ここでは、部下を成長させたいミドルマネジメントの方に、ぜひ考えてみていただきたいケースをご紹介したいと思います。

 

「自分で考えて動いてほしい」の落とし穴



ある建設関連の中堅企業で働く40代のY営業部長と私が、「部下の成長を促すために何が必要か」について議論をしていた時のことです。私たちがお手伝いしているのは「ミドルが主役の、次の成長のための風土づくり」ですが、この企業でも、「人をどう育てるか」は大きな課題のひとつになっているようでした。

私はY部長に、「ご自身の『仕事の進め方』を何らかの形にまとめて、部下に見せて、一人ひとりとディスカッションしてはいかがですか」と提案していました。しかし、Y部長はなかなかこの提案を受け入れてくれませんでした。Y部長には、次のような認識があったからです。

「自分は、うちの会社の営業として当たり前のことをやっている。偉そうにペーパーにまとめて部下に指導するようなことではない。日頃から気づいたことは伝えているから、みんなわかっているはず」
この発言を聞いた私が、「では、部下は十分に育っていると思いますか」とあらためて聞くと、「育っていない、安心して任せられない、報告や相談がない」という返事でした。

Y部長は、「上下関係で仕事を動かすのではなく、部下に自ら考えて、効率のいい、もっとクリエイティブなやり方を生み出してほしい」「そこに自分なりのやりがいを見いだしてほしい」と願っています。ご自身も、現場でトライ&エラーしながら成長してきたので、それは自然な発想と言えるでしょう。私と対話している間にも、「部下に押しつけたくない」と何度も繰り返していました。

一見、すごく良い上司です。しかし、そこに「自発的に、クリエイティブに仕事をしてほしい」と願う上司がハマりがちな落とし穴があります。
「自分で考えて動いてほしい」と伝えれば、部下が自由に動いてくれるかというと、残念ながら、なかなかそうはならないからです。特に、上司が望む「必要な動きを、自分で考えて行動できる」というレベルに至るまでには、多くの時間や人との関わりを要するのが普通です。Y部長自身も今の経験を積むのに、20年をかけてきたわけですから。

「Y部長が、経験から学び、実践している営業の流れを見える化し、伝えることができれば、それを踏み台にして、部下の皆さんはもっとうまくいくやり方を考えることができるはず。それは、よりよい仕事のしかたを生み出すために、大切なことではないでしょうか?」思わず私が、そう投げかけたときでした。

まとめることを拒んでいたY部長の口から、「踏み台っていいですね。踏み台になら喜んでなります」という言葉が出てきたのです。この発言の真意を尋ねると、「自分の仕事がベストだなんて思っていない。自分が踏み台になって、部下がもっといい仕事のしかたを考えてくれるのであれば、すごくいいことだと思う」ということでした。

 

ミドルが大事にしてきた「自分のこだわり」を起点にする



その後、Y部長は、「仕事の進め方」を整理した資料を作成します。業務フローに自分がこだわっている10か条を入れ込んだシートです。

じつはY部長には、ずっと気にかかっていた部下がいました。心根はいいものの、勢いにまかせて仕事をするようなところがある営業マンのMさんです。Y部長はさっそく、自ら作成したシートで、部下のMさんと業務フローをていねいにすり合わせながら、大事にしてほしいことを伝えました。

すると、Mさんは、折にふれてシートを見ながらY部長に必要なことを報告・相談してくるようになったそうです。今後は、この業務フローをベースにした試行錯誤によって見えてくるMさんの強みをいかに一緒に磨いていけるかが、Y部長の課題になると思います。

上司が仕事のしかたを部下に伝えるときに重要なのは、「自分が本当に大切だと思うこと」を整理して伝えることです。それなら、胸を張って、口で言い続けることもできるからです。どこの誰がやっても同じ結果になる仕事の進め方があれば理想的です。しかし、営業の場合、そのような進め方はそうそう存在しません。営業スタイルは、本人のあり方や価値観に、良くも悪くも影響されるからです。

だからといって、部下が自分で「イチから学ぶのがいい」というのではもったいない。ミドルの世代が、会社や社会から機会を提供してもらい、得てきた経験という財産を、自分のためだけに使うことになってしまいます。

上の世代が「経験から得てきた、自分が大切にしていること」を書き出し、伝え、部分的にでも部下にやってみてもらう。それが上司と部下と、世代間の共通言語になっていきます。それをもとに上司は若い部下の強みを見いだし、これからの武器になっていくよう一緒に磨いていけるはずです。

このように、上司が自分で掴んだ確かなもの、大切なことを教えるところから、部下の成長支援は始まります。

それは、大きな流れで見ると、上司が経験を通して磨いてきた能力や知見を使いながら、部下の強みを伸ばすことで、自分の中にある良いものを、会社の次の成長につなげることにもなるでしょう。

あなたがここまで頑張って積み重ねてきた経験を、自社の未来の成長につなげてみませんか。

著者プロフィール

太田 久美

太田 久美

KUMI OHTA

「面白く仕事をする人を増やして、日本の粗利を大きくする」が実現したいこと。 得意な分野として、顧客接点を持つ企業を中心に支援。

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