〈エンゲージメントサーベイで組織は変わるのか?〉<br>導入企業が見落としてきた「アフターサーベイ」のプロセス(前編)<br>組織変革の側から見たサーベイ活用の「落とし穴」|コラム|スコラ・コンサルト
〈エンゲージメントサーベイで組織は変わるのか?〉<br>導入企業が見落としてきた「アフターサーベイ」のプロセス(前編)<br>組織変革の側から見たサーベイ活用の「落とし穴」

〈エンゲージメントサーベイで組織は変わるのか?〉
導入企業が見落としてきた「アフターサーベイ」のプロセス(前編)
組織変革の側から見たサーベイ活用の「落とし穴」

滝口 健史 | 2021.06.21

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〈エンゲージメントサーベイで組織は変わるのか?〉<br>導入企業が見落としてきた「アフターサーベイ」のプロセス(前編)<br>組織変革の側から見たサーベイ活用の「落とし穴」

エンゲージメントサーベイなどの社員意識調査を実施したものの、「組織が変わらない」「動きにつながらない」という悩みを持つ担当者は少なくありません。
私たちが組織変革の支援をしている中でも、サーベイ実施後の展開について相談を受けることがよくあります。
調査によって、人や組織の状態は“そのつど”把握できても、“その先”の目的と道筋がつかめていないために、サーベイ実施という小さな目的達成にとどまっているようなのです。

今日の厳しい経営環境では、環境変化に適応して変化できる人と組織の能力がこれまで以上に求められています。
そのポテンシャルを引き出すカギとなるエンゲージメントをどう高めるか。
サーベイを起点にしたアプローチの一つとして、サーベイフィードバックも多くの企業で行なわれるようになりました。
しかし、エンゲージメントが高まったとしても、経営者や社員がその先に期待するのは、よりよい会社に変わっていきそうだと思える「変化」です。
その期待に応えるためには、サーベイ活用の範囲や次元を拡張すること、サーベイを滑走路にして組織の変革を加速していくプロセスづくりが必要です。

ここでは、「活用の可能性」の観点からサーベイを取り上げ、前編では、なぜサーベイが組織の変化につながらないかを人事部門の特性から考察。
後編では、どうすれば組織に動きをつくれるのか、調査結果を活動へと転化する「アフターサーベイ」のプロセスを紹介します。


サーベイの使われ方に関する私の葛藤

私は、サーベイ結果を組織変革の活動につなげるプロセスづくりを10年以上にわたって行なうなかで、「経営課題に応えるものとして、サーベイは本当に役に立っているのだろうか?」と考え続けてきました。
というのも、私がサーベイ全般について見聞きしてきた経験では、次のような使われ方にとどまることが多いからです。

◆調査のあとどうしていくかのシナリオがなく、何を調査するか、だけに関心が向かっている。
流行りの経営トピックについての調査結果を報告、社内広報して任務完了。
具体的な問題解決とは紐づかず、何やら活動をしているようだという認知度アップくらいの効果にとどまる。

◆スコアの低い項目の数値を上げるにはどうしたらいいか? と部分に注目した発想や直結する解決策の相談になる。
あるいは、部門ごとのランキングを公開して競争意識による改善に期待する。
それ以外の展開策には乏しく、問題を生み出している深い原因は何だろうか?とみんなで会社全体のことを考えるのが難しい。

◆サーベイ後の活動につなげようとする企業の担当者がいても、サーベイを無事に実施し報告書をまとめることだけでも大仕事。
その先の活動展開を見据える余裕がないケースも多い。

このような状況を見てきて、私自身はサーベイを変革活動に結びつける難しさを感じてモヤモヤしていたのですが、サーベイと変革活動のほかに、人事部門を加えた3つの要素を眺めているうちにストンと腹に落ちる考えが浮かびました。

それは、人事部門のニーズとサーベイの「相性の良さ」が逆に変化や動きを起こりにくくしている面があるのではないか、ということです。


サーベイを「静的」に使う人事部門の特性と落とし穴

サーベイの実施からその後の活用までを担うことが多い人事部門は、その役割ゆえに、次のような3つのニーズにもとづいて施策展開をしています。
そこに、サーベイ活用を限定的かつ静的なものにしてしまう落とし穴があるように思います。

①モニタリングニーズ
特に大規模な組織では、人や組織の状態を隅々まで目で追うことが難しいため、定期的にモニタリングしたいニーズがあります。
不具合がある部署を見つけられれば、改善を促したり、何らかの策を講じることができます。サーベイは文字どおり、組織を「見渡す」ツールです。
とりわけ、数値化された結果が得られる点は、今日のエビデンス重視の流れにマッチしています。

②他社と比較するニーズ
人事部門は職務として、魅力ある健康な会社をつくり、社員をリテンションしなければなりません。
そのためには、総合的な社員満足度の向上が必要で、職場環境や給与水準など個別項目に対する社員の評価も気になります。
サーベイにおいても、それらの項目の自社スコアを世の中の平均や業界平均と比較します。

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サーベイによって状態が数値化できると、コックピットで計器の数値を見るかのように組織を概観できるので便利です。
しかし、客観的なデータが実態のすべてを示すわけではありません。
それを重視しすぎると、職場の現地現物を見たり、社員の本音を聞くことで浮かび上がってくる問題や、こんな組織にしたいという思いや熱意といった主観を見落としてしまう可能性があります。
***

3つ目は、特に「エンゲージメント」をうたっているサーベイに関することです。

③人事施策を全社一斉に展開するニーズ
人事部門は通常、全社に対して共通の制度や施策を導入・運用する仕事をしています。
問題がわかれば手を打って全体に波及させます。
たとえば、制度の中身の問題なら制度変更をする、チームマネジメントの問題ならミドルマネジャー層向けに研修して効果が広がるようにするという具合に。
一方、事業や個別具体的な課題を直接扱うことは少ないのではないでしょうか。

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エンゲージメントサーベイはこのような人事の業務範囲と施策展開を前提にしているので、調査範囲は、制度や処遇、教育機会や物理的環境、上司のマネジメントといった“人事領域に関わる内容”に重点が置かれています。

分析の目玉は、「ここを改善すればエンゲージメント(の数値)が上がる」というインパクトの大きい項目を統計分析により特定することです。
幅広い人事領域のなかから優先的に解決すべき問題が示されるので、人事部門は、方針の明文化、新しい制度やツールの導入、研修実施、といったピンポイントの施策を打ちやすくなります。

一方、そういった分析をもとにした施策を打ちやすいテーマとは別に、組織の良し悪しを左右する要素としては、協働関係や組織文化のように、人と人の意識や感情がつながって生まれるものがあります。
エンゲージメントサーベイもそれらの項目を測定はしていますが、数としては手薄な印象です。
分析して施策へ反映することも難しいテーマなのかもしれません。
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サーベイは、エビデンス文化のもとで人事の業務をサポートしてくれます。
個別の問題に着実に手を打ち、漸進的に変化していくにはとても有用なツールです。
しかし、基本的にサーベイの活用範囲は人事の既存領域にとどまっており、現場を巻き込んだ動きづくりには手が届いていないのではないでしょうか。
このような人事にとっての“使い勝手のよさ”がアダになり、サーベイが限定的な範囲での利用にとどまってしまう。
それが、結果として組織に変化を起こしにくくする一因になっているのではないかと私は感じるのです。


誰にとっても難しい「問題の捉え方」と「動きづくり」

サーベイはうまく使えば、全社的な変革の動きをつくる活動の起点となりうる有効な手段です。
ところが、もともとサーベイには、問題を機械的に要素分解し、対策が必要な部分に対して個別に手を打つという対症療法的アプローチを誘導しやすい側面があります。
それでは根本原因の究明は進まないままです。

あらためて「問題をどう捉えるか」を考えてみると、解決したい問題には、深い原因や、絡み合った他の問題との関連があります。
一つひとつの問題をバラバラに潰していけば解決するわけではありません。
サーベイでは測りきれない問題の構造や、本音の中に隠れている問題などは、サーベイ以外の方法も使って真因をあぶり出すことが必要です。

そして、最も大事なのは、変化の動きにつなげていくために職場で問題を感じている人たちが、自分たちで問題を解決できるようにサポートすることです。
とはいえ、そんな経験を持つ人は珍しく、簡単にできることでもありません。どうしたらいいのでしょうか。

このような問題の捉え方と動きのつくり方を意識して、問題に関わる人たちが対話を通じて組織の実態をつかみ、解決していこうというのが参画型のアプローチ、「アフターサーベイ」の考え方です。

後編では、変化の活動の起点としてサーベイを生かしていく「アフターサーベイ」のプロセスを紹介します。

著者プロフィール

滝口 健史

滝口 健史

TAKESHI TAKIGUCHI

クライアント組織での従業員サーベイを活用した実態把握のほか、ワークショップ開発や社内の情報システムも担当。 事実情報や議論を積み上げることで新たな洞察が導かれるプロセスを日々探求している。

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