自治体改善マネジメント研究会

今年度は、主たる開催場所が大阪であることから、近隣の大東市(大阪府)、神戸市(兵庫県)、生駒市(奈良県)と、他には遠方にも関わらず鹿屋市(鹿児島県)、須坂市(長野県)、富士市(静岡県)、川崎市(神奈川県)からも応募があり、過去最多の計7団体、9人の職員が集まりました。

初回のキックオフミーティングは、5月末に2日連続で行ない、まずは各々の参加動機とこれまで行なってきた改善・改革取組みを紹介し合いました。するとその中から、自治体は違っても、いずれもが行政経営改革の第2ステージに入ってきたことがわかりました。

行政経営改革の第2ステージ

第2ステージの特徴としては、以下の3つのポイントがあります。

一つめは、首長が代わり、改革の質が問い直されていること。

2003年以降、首長がマニフェストを掲げて選挙に出るようになりましたが、その首長も二期8年、三期12年を経過して次の首長に交代しつつあります。地方分権第二世代の首長と言えるでしょう。

分権第一世代の首長は、“住民自治”を基本理念とすることでこれまでの“行政主導”から行政改革の方向転換をすることに重要な役割がありました。そして、事務事業評価や指定管理者制度など、新しい経営を図るために各種の制度を導入し、財政や人員の削減をすることで改革による量的な成果をアピールしてきました。

しかし、第二世代ともなると前首長との差別化を図ることが容易ではなくなってきています。いかにビジョンを打ち出すか、限られた財源と定数の中、民とのコラボレーションを活用するなどして、どのような戦略を見出し、実現していくのか。改革の中身や実行の質が問われるようになっています。

二つめは、行政組織内に“行政経営”や“改革推進”というソフト面を重視する職務ができたこと。

首長の執行機関である行政組織には、主に総務部局内に以前から“行政改革”を担当する職務はあったはずです。しかし、これらは主にハード面の改革を計画したり、制度をつくったりすることに役割があったのではないでしょうか。

それが、現在では地域でイノベーションを起こしていくことや、戦略を実行するために組織を動かしていく、といった“経営”や“推進”という改革を進めていくソフト面での役割にシフトしてきています。

三つめは、職員のキャリアデザインとして“経営力”や“改革マネジメント力”が一つの専門分野になってきていること。

職員の人事ローテーションの中には、しばしば “政策企画”や“人事”“税”“財政”“福祉”などの分野の専門性が求められることから、若いときに当該部門に配属された人が管理職として戻っ
てきて再配置されるというケースが見受けられます。

これと同じように、近年では“経営”や“改革”担当者が再度この職務に戻ってくるケースが出てきています。
これは、組織や担当が新しく設置された時代から10年近くが経過したことにより、キャリアデザインとして職員の能力やスキルを育てる時代へと道が開かれてきたことを意味しています。

これからの研究活動

地方分権が進むにつれ、自治体の課題やめざす姿には違いが出てきていますので、行政経営のあり方も、単純に横並びで真似ることが困難になってきています。しかし、個々の自治体の中に埋没していたので見えなかった時代の流れや自治体全体がどれぐらいの幅やスピードで変化してきているのか、という大局観も、こうして複数の自治体の状況を深く聴き取っていくと見えてくるものです。

これからの研究活動においては、これら全体から個々の自治体のおかれている状況をとらえる目を養いながら、自分たちの地域や組織の位置づけと特徴をとらえ、現状を見直して、問題の本質や今後の課題を見出していきたいと思っています。

なお、2015年の第二期事例研究メンバーの活動成果については、現在月刊「ガバナンス」で『いい役所をつくろう!~みんなが主役の自治体改善活動』の連載の中で一部紹介をしています。
ぜひご覧ください。

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