現場の問題からアプローチしていく方法

風土・体質改革に取り組む場合、まずは現場の問題からアプローチしていく方法がある。
現場の問題というのは“小さな入口”ではあるが、課題としてそれに取り組んでいく過程ではさまざまな問題が顕在化してくる。小さな入口から奥へ奥へと分け入っていくと、風土・体質を形成している社員の意識やトップを含む各層のマネジメントのあり方、さらには制度・システムから経営指針や行動指針にもわたる大きな問題が浮上してくる。
実は、そこまでも課題として捉えていかないと、風土とがっちり絡み合っている仕事のしかたを変えることはできない。

問題の原因をたぐるにつれて課題そのものが発展していくというのが、風土・体質改革の大きな特徴なのである。

ある環境計測機器メーカーのケース

たとえば、組立て現場では「深夜残業が常態化している」という問題が表面化している。
これを入口として取り組んでいくと、どのような課題が出てくるのだろうか。
深夜残業が続いている理由にはいろいろな要素が絡んでいる。最初は組立て作業の効率面に目を向けた〈生産性向上〉が課題となる。しかし、それについて話し合おうとすると「また現場だけにやらせるのか」「やってもしょうがない」という後ろ向きの言動が現れ、〈前向きな気持ちになる〉ことが次の課題となる。
なぜ効率が悪いのかをさらに追求していくと、作業がしにくいという〈装置の構造上の問題〉も課題になる。それと同時に、過去に何度も設計変更を提案したが解決されなかったという背景も見えてくる。
それをまた追求していくと、部門の利益を優先するような部分最適・全体不適を生んでしまう〈マネジメントの問題〉、そして〈経営指針や行動指針が浸透していないという問題〉に行き着く。これもまた大きな課題となる。
このようにして原因をたぐりながら、発展していく課題を公式の課題として取り上げ、同時並行的に手を打っていく。その過程で仕事のしかたが変わり、当初の「残業問題」も解決されていくのである。