「つながりの状態」をみる

単純に考えると、人が集まって組織で仕事をするときは、組織の考えや方針が社員の一人ひとりとつながっていないと、全体としてうまく実行されない。働く人同士がつながっていないと仕事の流れも悪くなる。これは業務プロセスだけの問題ではありません。
つながりのなさが根源的に「仕事や生活の楽しさ」を損なっていて、好きだと忙しくても工夫する、みんなと一緒だから頑張れる、といったやりがいや愛着をもてない仕事、会社になっていることが問題なのだと思います。

最近になって福利厚生の面からも対話の場が求められているのは、社員同士のつながりを意図しているためでしょう。

そういう目で私は、個人が「同僚や上司」と、「自分やチームの仕事」と、あるいは「会社の方向性や方針」と、ちゃんと気持ちの通い合うつながりをもてているかどうかを見ています。「つながりの状態」をみることは、組織の状態をとらえることでもあります。

組織において断たれているさまざまなつながりを、話し合うことを通じて結びつけていくことで、社員一人ひとりの仕事との向き合い方も変化していきます。何のためにこの仕事をやっているのか、また自分は何に貢献しているのかが、みんなとの話し合いのなかで見えてきて、自分自身でも見直すことができれば、もっと考えて主体的に仕事ができるようになるからです。

自分たちの意思で「つながり」を生み出していく

ある企業で話し合った時のできごとです。集まったメンバーは、仕事に中心的な役割を果たす、問題意識をもった人たちでした。
日ごろから感じている問題を出し尽くしたあと、自分はこうなりたい、こんなことをしていきたいという話を始めたものの、「そうはいっても」と現実論になり、議論がループし始めました。ぐるぐるまわって話が行きつ戻りつし始めた時、そのうちの一人が言った「事業のありたい姿や方向性を語れないのは、考えたことがないからかも」という一言がきっかけになって、自分たちなりに考えようということになりました。

その後、まる2日間かけて真剣に企業理念から個人の目標までを考え抜いたことで、メンバーに変化が起こりました。

「大きな方向性のベースを確認し合えた」
「おれ、今までより会社が好きになったかも」
「理念の部分の思いを共感できたメンバーで仕事したら、すごく、いい仕事ができそう」

そこでの大きな収穫は、お互いを否定せずに話を聴き合うことで仲間同士の連帯感が生まれたこと。理念や方針の意味を一緒に考え、理解していくプロセスを丁寧にたどることで、組織と自分との関係が見えてきたことです。
これは自分たちの意思で「つながり」を生み出していくプロセスでした。

もしも職場で「方針を理解して仕事をしよう」とか「チームでの情報共有が大事だ」というような言葉がよく聞かれるようなら、情報の量ではなく、対話の量と質に目を向けてみてください。