金井 壽宏

組織変革をドラマになぞらえる人は多い。たとえば、組織における変革型リーダーシップの研究で名高いミシガン大学のノエル・ティシーは、組織変革を「終わり→中立状態→始まり」の3幕からなるドラマとして描いた。
変革を通じて、慣れ親しんだこれまでの組織生活が終わる。しかし、まだ新しい組織の姿が見えないので、宙ぶらりんな状態をまずくぐらなければならない。そこをうまく舵取りすることから、より多くの人が納得する、新しい変革のビジョン、そこに至るシナリオ(内容)や道筋(プロセス)が徐々に見えてくる。
(変革の「内容」に対して「プロセス」をコンサルティングするという発想は、MITのエドガー・シャインにまでさかのぼる)。

本書の語り部たちが雄弁に訴えるのは、変革をともに生きることができるコンサルタントは、シナリオのコンテンツを描くだけでなく、まずはプロセスを円滑化しないといけない、という点にある。
プロセスデザイナーを自認する柴田さんが、組織の内部者2名、北村さんと稲生さんとともに語る変革劇は、なぜ、よい名門会社ほど簡単には変われないのか、そのパラドクスを解きほぐす。
キーワードは、(コンテンツという以上に)プロセス!

北村 三郎

「私の35年間の会社生活は長い人生の通過点だった」が、今いちばん実感していることです。野球にたとえると、人生のラッキーセブンは定年後にやってくるようです。
私は40歳代の5回で「仕事のテーマ、風土改革」を見つけ、50歳代の6回で実践しました。
そして、定年になってからは「人生のテーマ、意識改革」に切り替えて研究と実践を続けてきました。

ラッキーセブン以降を楽しく過ごすためには、現役時代から自立しておくこと、社内と社外にネットワークをつくっておくこと、だと思います。
自立とは「自分の頭で考えて、自分の心で判断して行動する」ことです。そして、人生は出会いと別れの連続ですが、よい出会いをしっかりメンテナンスしていくことがネットワークをつくる上で大切だと思います。

稲生 武

あれから20年、ようやく本当のことをお話しできる心境になりました。
20年という時間が、私自身が持っていたこだわりや偏見などの余計な部分をそぎ落とし、あの活動における「たいせつなこと」を浮き上がらせてくれたのかもしれません。素直な気持ちで振り返るたびに、あの時、いすゞの改革に関わり、本気で行動してくれた多くの方々への感謝の気持ちがこみ上げてきます。

出会いとは素晴らしいものです。私も含め、誰もが不可能と思っていたわが社の大改革も、キッカケは北村さんのある本との出会いでした。
この本と出会った、一人でも多くの方が「社員が自ら考え、決定し、活き活きと楽しく取り組むことと、企業の業績は両立する」ことを実感していただきたいと切望しています。

柴田 昌治

20年も前になされたいすゞ自動車の改革を、あえて今書く意味とは何なのでしょうか。成功物語だから記録に残したい、というわけではありません。「成功か失敗か」と問われれば、改革のすべてが成功だったとは言えない、というのが私の立場です。しかし、この改革のもたらした意味は非常に大きい、ということだけは胸を張って言うことができます。

というのも、実はスコラ式風土改革アプローチはほとんどすべてといってもよいほど、あのときの改革の試みから生まれているからです。オフサイトミーティングもそこから始まり、コアネットワークという考え方もこの時に生まれたのです。
20年前、私たちがもしいすゞの改革を支援する機会を得なかったとしたら、今日のスコラ式は存在しなかったかもしれない、とさえ思うほどなのです。そういう意味で、スコラ式風土改革アプローチの原点はこの本の中に見ることができる、と私は思っています。

概要

『企業変革ドキュメンタリー どうやって社員が会社を変えたのか』
著者:柴田昌治、金井壽宏
発行:日本経済新聞出版社
価格:1700円+税

もくじから

はじめに

序 章 日本企業がわずらっている現代病―チームの免疫不全症候群

第1章 なぜ会社は変われないのか
【金井壽宏の変革ノート1】個人が変わらなければ、組織は変わらない

第2章 大企業病を克服せよ―仕掛人・北村三郎氏の語り
【金井壽宏の変革ノート2】変革型リーダーはここに何を学ぶべきか

第3章 社員が自ら考えて会社を変えていく
【金井壽宏の変革ノート3】日本発・組織開発手法の誕生

第4章 驚異的成果を生むマネジメントの真髄―部門トップ・稲生武氏の語り
【金井壽宏の変革ノート4】チームワークが本当に機能するとき大変革が起きる

終章 人を幸せにする会社とは―「いい会社」の条件

あとがき