三鷹市の大事業を支える二人の職員

三鷹市が2006年から進めてきた「みたか・子どもと絵本プロジェクト」が生んだ成果のひとつです。200名以上の大人と子どもがボランティアとして参加し、2つの展覧会(うち、ひとつは美術館を借りての本格的な絵本原画展)を成功させたのち、ついに今年、国立天文台の協力を得て拠点施設をこしらえてしまったのでした。私も一市民として、2007年から参加させていただいています。

すでに数十年にわたり、首長を中心に、市民に開かれた市政、そのための組織づくり、ひとづくりに取り組んできた三鷹市について語るべきことは多くありますが、今回は、この大事業を支える二人の職員の方について、私が感じたことを述べさせていただきます。

「来る者拒まず、去る者追わず」のボランティア

市民ボランティアとの協働は実は多くの困難を伴います。「来る者拒まず、去る者追わず」のボランティアは、ある意味において、営利企業の社員よりもまとめにくい集団です。バックボーンの違う人ばかりなので、目的を合わせるところから大変な時間と労力が必要です。
しかし、私がお会いした二人の職員の粘り強いこと!
世に「継続は力なり」と言いますが、素人集団である市民ボランティアの声をよく聞き、時間をかけて、一人ひとりの強みを引き出すことで、絵本の家はハードだけでなく、そこに集う人のネットワークも同時に生み出す、中身の濃いものに仕上がりました。
お二人の情熱もさることながら、私は情熱ある職員を支える組織の力にも敬服します。
どうやら三鷹市では「少数精鋭」という仕事のユニットの原則が伝統的にあり、少数精鋭で行なうがゆえに、仕事の進め方は「市民とともにやるほうが早い」という暗黙知が存在しているようです。
三鷹市では、市民大学などが充実していますが、さらに「保育付き講座なんかも40年前からやっているんですよ」とのこと。そこには「市政にものを言う市民を育てる」という、市の強い意志を感じます。そして、お二人は笑って、こう言います。
「三鷹市は市民が手ごわいですから(笑)」
その笑顔は少し自慢そうでもあります。少数精鋭で働く職員、市政についてきちんとした意見を言える市民、両者の協働が、いい意味での緊張感を伴うのは当然です。
私から見れば、職員も十分に手ごわそう(笑)。去年7月オープンの絵本の家には、三人目の職員が配属されましたが、聞けば、その方は公募に応じての配属なのだそうです。子どもをしっかり育てる社会をつくる、という自分自身の高い目標を追って、自ら手をあげて参加した“第三の男”はイキイキとした表情で、市民たちを巻き込み、どんどんネットワーク化していくのでした。

このようにして、長年にわたり整えられてきた環境に生かされて、情熱ある職員がより大きな力を発揮しているのが三鷹市なのだと思います。
天文台の森のなか、にぎやかな親子の姿とともに、明るく働く職員さんの話を聞きながら、「“職員を生かす役所”こそが、“市民を生かす役所”になれるのだ」という思いを新たにさせていただいたのでした。