危機に際しては、職員は現場に駆けつけ、問題を解決するために不眠不休で働きます。解決にあたっては、地域内で民と連携するだけでなく、近隣市町村や県、国と組織の垣根を越えて協力し合う体制をつくって最善を尽くします。行政組織の間では遠隔地からも実に多くの職員が応援に来て一定期間勤務しているのです。

尊い命や被害の犠牲を伴うこうしたさまざまなクライシスマネジメントの体験と反省は、他地域へも伝播、共有し、その後のリスクマネジメントに生かしているケースが少なくありません。

さらに、ある自治体では、このような危機的状況への対応力は非常時や訓練時だけでなく、平時から鍛えておく必要があるだろうと考え、日頃から以下のような取組みを行なうようになりました。

外の人材に力を借りる

地方の役所では、職員の専門性が乏しいところがあります。また、地域の外に出てネットワークをつくっている人も少ないのが現実です。
そこで、課題を検討するときには、いろいろな分野の専門家を呼んで話を聞いたり、共に仕事をする機会を設けたりしています。

そういう場数を踏むことで、異質な人に接しても臆することなく質問ができるようになり、情報のアンテナが立って、次は誰を呼んで来ようかという能動的な動きも起こってきました。

横断的に話し合う場をつくる

普段から部署の縦割りで仕事をしていると、自然と指揮命令系統に適応した動きしかできなくなってしまいます。
そこで、 新しい課題に取り組むときには、できるだけ課を横断したワークショップやプロジェクトチームを設けるようにしています。

このような場をあちらこちらでつくっていくことで、いつでも気軽に課を越えて話し合い、立場が異なるメンバーといろんな角度から意見を出し合って、一緒に答えを創り出していくことができるようになりました。
役職に関係なく誰もがリーダーを務める経験も増えています。

何のため、どんな役割を担うのかを確認する

新しい仕事、突発的な対策では、誰が何を担当するのか決まっていない役割 を担っていく必要が出てきます。
そこで、定期的な目標管理の場面でも、環境変化の要因から業務をとらえ直し、官と民の役割分担のあり方や、部署間・階層間・担当間でそれぞれがどんな役割を担うのか、などを見直すようにしています。

この自治体では、これらをピンチに力を発揮するための筋力トレーニングとして行なっていましたが、何年か続けていると、日々の政策を推進するときにも俊敏にチャレンジを起こせるようになってきました。
最近では、国全体で注力している「地方創生」の動きの中でも、この自治体が先進的な取り組みに名を連ねることが増えています。

ピンチを乗り越えたときに組織が身につけたタフネスは、新たなチャンスを生み出す踏み切り板になり得るものです。