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「事実」に色をつけたままで話し合わないために
――創造的対話のための意識のマネジメントとは?

2017年08月16日

 

Googleが研修に取り入れていることで注目されたマインドフルネスは、ビジネス書などで取り上げられており、日本でもかなり知られてきました。新しい能力開発の手法として、ビジネスに活用している方もいるのではないでしょうか。

実は、マインドフルネスのような「今」に意識を向けるための手法が、日本でも生まれていたことをご存じですか?思想家、現代ヨガ瞑想家として知られる故・山手国広氏が考案したリアリティ・エンジニアリング(Reality Engineering、以下RE)です。これは、熟達した経営者たちがどんな決断のためにどんな現状認識の仕方をしているのかに着目して開発された、事実(リアリティ)を見るための優れた方法です。

私は数年前からREを学び始め、話し合いの「場」において活用しており、REが創造的対話を起こすための意識のマネジメントに有効だと実感しています。

ここでは、このREについて、その効果と簡単な実践方法について紹介します。

 

●REを活用することで、本当の問題解決に向かえるようになる

スコラ・コンサルトでは、“気楽にまじめな話をする”をコンセプトにした「オフサイトミーティング」を提供しています。その“場”においては、感情・感覚を自由に表現し、「腹が立つ」のような感情や、「もやもやする」といった感覚を、そのまま口に出してよいのです。

抑圧していた感情が解放されるため、ここぞとばかりに会社への不満や批判が爆発します。不満や批判は、「会社を良くしたい」という気持ちの裏返しでもあります。かつては、ここで顕在化したエネルギーが、そのまま会社に変革を起こす原動力となりました。

しかし、ここ5~6年、オフサイトミーティングの様子が変わってきました。社員たちが変革に向かうエネルギーを高めるためのポイントが以前と異なってきたと感じています。

かつては、抑圧された状態を解き放てば「会社を変えよう」とするエネルギーが出てきました。しかし昨今は、頑張れば自分の生活が良くなると思いにくいからでしょうか、問題解決や目標達成などの成功体験が少ないためでしょうか、自由な話し合いをしても、なかなかエネルギーが高まってこない側面があるのを感じます。

「会社を良くしよう」という言葉が社員の心に響きにくくなり、今をできるだけ快適に過ごせればよい、というある種の安定志向が強くなったようにも思います。そんな時代の流れを感じて、「より効果的な変革のエネルギーの高め方がないか?」を模索している中で、私はREに出会いました。

REは、事実を見るための一つの手法です。

人の話の中には、どうしても意見や解釈が入ります。その中にある「事実」(リアリティ)だけを「組み合わせる」(エンジニアリング)ことで、これまでの延長線上での発想とは違う答えが生み出されます。このような過程を経てたどり着いた結論によって、話し合った人々の中に共鳴状態が生まれ、自然な流れで新しいアクションが生まれる、というREの仮説に共感を持ったのです。

 

●本当の問題解決に向かう創造的な話し合いができる

ある同僚に対して、あなたが「あの人は、悪い人だ」と考えているとして、それは“事実”でしょうか。

たとえば、あなたが幼少から父親との関係が悪く、たまたま同僚の言動が父親に似ているから、そう解釈しているにすぎないかもしれません。

このように、過去の体験からくる怒りや恐れといった感情的反応や思い込み、こだわりが、事実に「フィルター」をかけてしまいます。この状態では、今ここにある“事実”が見えません。まずはそのことに気づき、フィルターをはずす必要があります。

REがめざす理想の状態は「ゼロ」と呼ばれます。これは、感情的反応や思い込みに左右されていない意識状態です。建設的な話し合いをするためには、場にいる人がゼロを意識する必要があります。

具体的には、自分の気持ちの中に怒りや恐れといった悪感情を感じたら、すぐに意識して理想的なゼロの状態に戻すよう工夫し、人の意見に対してもゼロの状態で聴くようにし、偏ったように感じる意見であっても、その中の事実を見つけるよう努めます。

それぞれが持っている思い込みを超え、事実を見ながら、新しい答えを見つけ出す。このプロセスを経ることで、本当の問題解決に向かえるのです。

 

●「結論」に対するコミットメント度合いが高まる

私自身にもREを学んだ効果があらわれました。

オフサイトミーティングで、ゼロの状態を意識しながら、事実に着目した話し合いを行なうようにしたところ、結論の精度が上がったのです。結論の精度が高い状態とは、その場にいた人たちの結論に対するコミットメント度合いが高いということです。

これまでは、答えを早く出そうとするあまり、自分の中にある結論らしいものに無意識に誘導しようとしていたと気づきました。無意識の誘導によって、その場にあらわれていた大事な事実を見落としていたかもしれません。

私がなんとなく持っていた結論を手放すことで、みんなが持っている事実をうまく引き出すことができるようになりました。より多くの事実が集まることで、問題解決につながるヒントが見つかりやすくなったと考えています。

 

●「ゼロ状態」に近づくために準備すること

本当にゼロの状態になるには、相当の熟練が必要です。それこそ、一生をかけてめざすようなものだと思います。とはいえ、ゼロの状態に近づこうと意識することが重要であり、それだけでも効果はあらわれます。

ゼロは感情の偏りがない状態です。話し合う中で感情の傾きや偏りを自覚したらゼロに戻します。そのための準備として、まずはあなたのゼロの状態を知っておく必要があります。

REでは、「物事に熱中したり、没頭したりしているときの状態」がゼロに近いと言われています。まずは「あなたが好きなことをしているとき、体のどの部分に、どのような感覚があるのか?」を考えてみてください。イメージできたならば、その感覚を味わい、記憶します。私は踊ることが好きなので、踊っているときがゼロに近いようです(最近はほとんど踊っていませんが)。ですから、踊っているときに感じている体感覚を自分の中に落とし込んでいます。

では、具体的にゼロの感覚をどう使えばよいのでしょうか。

たとえば、会議中、誰かの意見を聞いたときに、お腹のあたりにもやっとした感覚が起きるなら、その正体は怒りや恐れかもしれません。そんな感情的反応を察知したら、ゼロの体感覚に自分の軸を戻すという方法で、感情の傾きや偏りをゼロに戻します。人の話に意識を向けながら、同時に、自分の感情にも意識を向けるという全方位的な意識の向け方をして、ゼロ状態を保つように意識をマネジメントするのです。

こうやって、自分の内的状況を整える努力をしていると、それが影響して場全体がゼロの状態になっていきます。そんな中で出てきた事実だけを拾っていくと、どこかで自ずと結論が出るのです。

場全体でゼロの状態を意識していても、問題解決の糸口が見つからないときは、大事な事実を見落としている可能性があります。そんなときほど、ゼロに戻ることを意識し、結論が出るまで事実を見続けることが大切です。

まだまだ私も修練の段階ですが、良い場づくりをするために大事な修練だと感じています。最初はゼロ状態を意識することが難しいかもしれませんが、価値観の違う人たちと建設的な仕事をしていくときに役立つREの考え方だけでも、ぜひ取り入れてみてください。

※REについては、私が担当している、創造的な「対話」を学ぶ「スコラ・ダイアログ・ジム」にもそのエッセンスを取り入れています。
興味がありましたら、ぜひご参加ください

高木 穣

高木 穣(たかきゆたか)

組織変革への重要なファクターである、”場”づくりのプロフェッショナル。その技はスコラの中でもトップクラス。“場”の空気を読んだ振る舞いで”安心感”を醸成し、互いに自然体で話し合える”場”を創り出す。

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