セミの声を聞かない夏です。諸外国の人たちにとっては騒音だったりタンパク源でしかないセミですが、日本では昔から夏の風物詩。梅雨明けとともに鳴き始めるセミの声が夏の合図でした。それもこれも梅雨があり、雨が降ってこそなのですが。日本は今年も梅雨が短く、列島全土で高温の日が長くなり、セミが地上に出てくる条件が叶いそうにありません。
動植物など生きものは命をつなぐために正確な体内時計と時間表を持っていて、冬眠から醒めたら、渡りの旅先に着いたら、地上に出たら、花が咲いたら…採食や繁殖を支える環に合流できるように食物連鎖のタイミングを合わせて生きています。その大元になる自然のリズムが崩れると、生態系の循環にも連鎖的なズレが生じます。その環っかの続きには山や海があったり農作物や海産物があったり、季節の恵みを待つ人の生活や産業があります。「セミの声を聞かない夏」の背面には広範な生態系の断裂があり、また物価が上がりそうだなと心配になるのです。