行政改革のPDCAサイクルがひと回りした状態の中で見えてきた新たな課題

課題として感じられたのは、かつて行革を進める管理部門や改善活動の中核的役割を果たしていた人が担当を離れた後、取組みがトーンダウンしてしまうことです。

思いを持った人が、改善や改革を担当するポジションに就いているときは、取組みが大きく進みます。仕組みをつくるだけでなく、フットワークよく働きかけて、多くの人を巻き込み、部署を越えたチームをつくって、活動が進みやすい体制も整えているからです。今回の交流会参加者のうち半数ほどは、そんな成功体験をしたことのあるメンバーでした。

しかし、このようなメンバーでも、改革推進のポジションを離れると、なかなか思うように動いたり、周りを動かすことができなくなってしまいます。次の担当者に事務は引き継げても、思いまでを引き継ぐことは困難なもの。

せっかくつくってきた仕組みや活動がどんどん形がい化していく様子を見ると、悶々とした思いを持ってしまうのでしょう。これまで自分としては精一杯やってきたつもりでも、まだやり残したことがあったのではないか。

ポジションを離れても同じ役所にいる限り、自分にもまだできることがあるかもしれない。そんな「応援団」になりたいという熱意が、同じような思いを持つメンバーが集まって交流する場の中で再び湧きあがってくるようです。

見えてきた可能性

一方、過去に改善や改革をした成功体験がある人が、異動した先で、新しい取組みを始める可能性もできます。

ただし、熱意を持っていても活動はゼロからスタートすることになりますので、準備から必要になります。何から始めようか、新たな仲間づくりに向けていかに取り組もうか、と思いあぐねる日々が続きます。

可能性があっても、それが「できる」ようになるには、時間がかかります。ややもすると、日々の仕事に追われて時間が過ぎていきます。交流会の場は、そんな状況の中で何かを始めようとする人に、背中を押すきっかけとなるものかもしれません。

交流会参加者の言葉

交流会の最後に、次のように言葉を発した方がいました。

「自分と未来は変えられるけど、他人と過去は変えられない。これは、よく耳にすることですが、自分は、他人も過去も変えられるだろうと思っています」

よくよく聞いてみると、「他人を直接変えることはできなくても、他人が変わる手伝いはできる」という意味でした。

「思うようにいかない」ことは山ほどあるけれど、「思いに近づいていく」ことならできるかもしれない。肩ひじを張らずに、相手に近づいて、一緒に何かを始めてみたら、「もっとこんなことをしてみたらどうだろうか」と言えるチャンスが生まれてくる。自分も一緒にやってみることで、相手も変わってくることがある。

そして、「過去」についての認識は、その時点のとらえ方であり、今の自分がふり返って見たら、「もしかしたら、そうではなかったかもしれない」と思えることがある。過去の事実は変えられなくても、その意味づけを変えることはできるものです。

「他人も過去も変えられる」

要は、自分の気持ちの持ち様だろうと、その方は話されました。大きな改革を成し遂げたことのある人が身につけた経験知とは、そんな自然体でしなやかに相手やものごとを受けとめられる根強さなのかもしれません。

組織の景色は様々です。うまくいくことばかりとは限りません。うまくいかないこともあります。夜明けも夕暮れも、いつかは巡ってくるものなのでしょう。その中で、今をどう過ごすか、そして、未来にどう備えるか。多くの人が、改善や改革を一周回して二周目に入り始めた2012年の幕開けが、そこにあるように思えました。

私も、2000年から始めたこの「公務員の世話人交流会」の中で、参加者の皆さんとともに、またひと回り大きく成長していきたいと思っています。今年もどうぞよろしくお願いいたします。