私は、大学卒業以来、長年勤務していた富山県庁から、2022年4月に、地元滑川市の副市長に着任し4年目になります。

今回、滑川市で取り組んだ市役所の組織改革についてご紹介させていただきます。

 

1 はじめに

 

「市民が笑顔いっぱいのまちをつくりたい。市役所の職員が笑顔でワクワクしながら働いている職場をつくりたい」そんな思いを持って、総合計画の改定や、市役所の組織運営の仕組みを変える行政経営システムの策定などに取り組んできました。この仕組みを前向きに運用し、一緒に取り組んでくれる職員の輪を広げながら、失敗してもいいから失敗を糧に少しずつ夢の実現に向け取組みを進めていきたいと思っています。

 

2 課長補佐以下の職員全員とのミーテイング

 

2022年4月の副市長着任時は、市長以外に知っている職員はいない状況でした。そうした中で、まずは職員を知り、組織の課題を知ることが大事です。そこで、同じ考えを持っていた市長とともに、普段話すことの少ない課長補佐以下の職員全員150人とグループミーテイングを実施しました。その方法は、職員5人プラス市長、副市長の7人による座談会の実施です。これを30回繰り返し、全員と話をしました。

 

職員との座談会にあたっては、私が受講していたNPO法人自治体改善マネジメント研究会の「公務員の組織風土改善セミナー」で学んだ「オフサイトミーテング」の手法を取り入れ、ざっくばらんにジブンガタリ(自分の趣味など)、モヤモヤガタリ(職場の課題など)を行いました。この座談会のおかげで、多くの職員と知り合うことができましたし、多くの職員が普段から思っていた職場・組織の課題把握もできました。

課題は聞きっぱなしではいけません。できることから改善していきました。

 

例えば、多くの職員から言われた課題として、「職員数が少なく、通常業務以外に時間が割けない。とても新しいことを考える余裕がない」ということがありました。

実際に調べてみると、滑川市は、人口比で全国トップクラスに職員数が少なかったのです。そこで、その年度末の議会で、議員の皆さんの了解を得て、職員が働きやすい職場づくり、組織改革の最初の一歩として、職員定数条例を改定し、職員定数を15%増やしました。

 

3 MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の考え方を導入した総合計画の策定

 

着任2年目の2023年には、市長の意向から、総合計画を改定することになりました。総合計画の意味合い(MVVの考え方から将来ビジョン等の設定、ビジョン達成の手段である政策等の掲載、PDCAサイクルの設定など)は理解しているつもりでしたが、実際の改定にあたっては、ありがちな考えに流され、市長のマニフェストを落とし込みするだけでもいいかと思っていました。

 

一方で、市役所内で職員の意識改革を進めるため、NPO法人自治体改善マネジメント研究会から支援いただく形で、滑川市市役所内に課長級の職員5人をメンバーとした「チーム経営研究会」を設置しました。この研究会での検討テーマについて、支援者から「滑川市の職員は、総合計画の役割を理解していない。このままでは、意味のある総合計画にはなりにくいだろう」と指摘されたことをきっかけに、この研究会のテーマを総合計画基本構想の改定に位置付けました。

 

研究会では、他の自治体の総合計画、特に三重県南伊勢町の総合計画を勉強し、MVVの考え方を導入することとしました。自治体のミッションは、地方自治法に規定されている「住民の福祉の増進」と理解していますが、滑川市の将来ビジョンは何かということで、メンバーと共に、滑川市の魅力や歴史・文化を紐解きながら検討を重ねました。

 

苦労の結果、滑川市民のDNAは、全国・海外に富山の薬を笑顔で売り歩き、幸せを届けた先人の精神に影響を受けているとの考えや、ホタルイカなど光のまち滑川の魅力をふまえ、将来ビジョンを「笑顔いっぱい 幸せいっぱい 光り輝く 滑川」にしました。そして、基本理念は、市民のために、市民と共にまちづくりするとの思いから「市民起点・市民共創」にしました。

この総合計画で定めた基本理念、将来ビジョンは、私ども職員にとって、目指すべき目標であり、ブレない政策判断するための判断基準と考えています。

 

後編では、副市長3年目に取り組んだ行政経営システムの策定についてお伝えしていきます。

 

▼第5次滑川市総合計画(ご参考)

https://www.city.namerikawa.toyama.jp/shisei/9/11/9147.html

 

▼2026年度「チーム経営研究会」のご案内はこちら

https://jichitai-kaizen.net/topics1