慎重に進めた準備プロセス
2020年は準備プロセスと位置づけ、主に5つの活動を展開した。
① CEO対話
② 各事業部門内PRIDE PJ事務局体制の構築
③ PRIDE PJ事務局ワークショップ開催
④ 1事業部での試験的な取り組み
⑤「かるテット」やメルマガでの情報発信
CEO対話とは、社長が各BUの執行責任者と対話することで、20年7月から9月にかけて全国の拠点で実施した。1回につき執行責任者が3~4名集まり、2時間半ほど対話する。
当時はコロナ対策が厳しかった時期。リモートは使わずに全9回がリアルでの対話だったので、事務局は換気などの三密対策にも神経を使った。
「全国行脚のCEO対話をはじめとして、社長はPRIDE PJに多くの時間と労力をかけています。スコラさんから『組織開発は全社スポンサーである経営トップのコミットメントが重要』と聞いていたので、社長のスポンサーシップは、推進するうえで大きな後押しとなりました。エンジニア出身の社長は、製造現場の経験があり、組織力を高めるには対話が必要だとよく話しています。2024年に発表したパーパス(存在意義)の浸透でも、しっかり対話することを社長メッセージで発信しています」(森さん)
トップが率先して対話の重要性を示した意義は大きく、執行責任者に対話の価値を体感してもらう機会となった。
PRIDE PJ事務局ワークショップは、各BUに組織開発の推進事務局を設置してもらい、担当者に向けて組織開発の必要性や進め方などを説明する内容。20年10月から12月までに全4回開催し、合計27社50人超が参加した。21年1月から活動をスタートする計画を伝え、検討と準備をお願いした。
「組織開発活動は、基本的には対話を起点としながら、まず、社員意識調査で組織の現状を可視化します。その結果を当事者が対話を通して深掘りし、めざす組織の姿を設定します。それを実現するための課題に対する具体策を検討し、適切なアクションを行っていきます。また、組織内の当事者が取り組みを自ら考え、行動できるようになることをめざし、各事業部門に推進リーダーを立てて推進体制を事業部門内に構築。私たちは全社事務局として支援し、活動推進を各リーダーたちと一緒に進めています」(森さん)

4回のワークショップが終了したあと各事業部門の事務局との打ち合わせを行ない、21年1月から順次、活動をスタートすることになった。
執行責任者会議などの大きな会議では、活動全体の進捗状況を随時報告した。社長は事業部を訪れるときに、BUの責任者や推進リーダーに直接声がけをして、常に状況を気にかけてくれた。「スタート時は『対話して意味ある?』『忙しいのにやることが増えた』といったネガティブな受けとめ方は当然ありました。組織開発の価値が浸透するまでに時間はやはりかかります。スコラさんから“小さくはじめる”とアドバイスがあったので、準備プロセスは慎重に進めました。実際に活動を進めると、対話の価値に気づく方がどんどん増えて、軌道に乗りました」(森さん)
準備が整ったBUから随時スタートする形で進め、現在では30のBUのほとんどが活動をスタートした。
各BUの参加メンバーは、募集に手を挙げたケース、推進リーダーが声をかけたケースなどさまざま。開発や製造、営業、経理など職場が異なるメンバーが、会社や事業部について話しあう。標準的な対話は、2時間から2時間半、3週に1回のペースで開かれた。
「選ばれた人も、手を挙げた人も、みなさん前向きに参加されました。職場が違ってあまり話す機会がなかった人たちの話を聞くうちに、お互いの困りごとなどがわかってきます。前工程、後工程を意識することは業務に役立ちますし、横断的な組織の問題が共有されるようになります」(森さん)
