推進メンバーに火がつく瞬間

当時の組織開発グループは、グループ長と森さんの2人体制。ダイバーシティ推進の担当部署でもあり、PRIDE PJに取り組むBUが増えるにつれて多忙を極めた。

23年5月に深田直幹さんと石井絢子さんがキャリア採用で同グループのメンバーとなり、24年11月に同じく伊藤翔太さんも加わった。前グループ長が退職した現在、森グループ長以下4人体制でPRIDE PJ全体の事務局を務めている。

深田さんは各BUの活動を伴走支援するなかで、参加者の声から成果を確認しているという。
「通常の会議ではあまり話すことのない組織の課題やありたい姿について対話するのは新鮮な体験だと思います。ある推進メンバーから『PRIDE PJがなければ、組織は変わらなかっただろうし、ずっと同じ状況がつづいていたはず』と言われたときは、成果が認められたと感じました」(深田さん)


組織開発の成果は、すぐに実感できるものではない。一般論として、業績がよくない組織ほどメンバーの不平不満が蓄積し、活動そのものをネガティブに受けとめやすい。組織内の問題が複雑化して、解決の糸口が簡単に見つからないため、対話だけがムダにつづくと感じられることがある。
「対話の場が停滞するとファシリテーションが重要になります。スコラさんの進め方は私たちの一員になる感覚なので、参加メンバーは構えることなく自然に話せたと思います」(深田さん)

推進事務局は成果を急ぐのでなく、対話の場に変化が起こるまで待つことも大切だと石井さんはいう。
「参加していると、火がつく瞬間があります。対話が盛りあがり、みんなの表情がイキイキしてくる。活動がぐっと前進しだす瞬間です。事務局は一緒に走りながらも、火がつくのをじっと待つ姿勢も必要です。最終的には私たち事務局の支援がなくても活動できる状態がゴールです」(石井さん)

対話の進め方は、組織の状況や集まったメンバーによって異なる部分が大きい。基本形はあっても、実際の流れはケースバイケース。ファシリテーターには対話の展開を的確につかむ力が必要になる。
「いわゆる“ロジカルシンキング・ゴリラ”みたいな理詰めのコンサルティングは、組織開発には不向きでしょう。人間はロジカルだけで生きていませんから。状況に応じて柔軟に対応できるのはスコラさんの特徴だと思います」(石井さん)

組織開発では各自が“組織のありたい姿”を描き、互いに共有するところが大きな転換点となる。参加メンバーがお互いの人となりを知り、率直に“組織のありたい姿”を語りあえる場を実現することがファシリテーターの役割だ。

伊藤さんは、組織のなかで対話が果たす役割は大きいと話す。
「管理者研修などで、傾聴の姿勢が大切だと教わることがあります。しかし、傾聴する側の管理職は苦しいんですよね。一方的に相手の話を聞くのはかなりストレスがあります。
対話のほうがお互いの考えが共有できますし、上司も部下もストレスは大きくないでしょう。さらに、お互いの視点や考え方、経験を持ち寄ることができれば、一方だけで考えるよりもよいアイデアを生み出すことにもつながるのではないでしょうか。」(伊藤さん)

上司・部下に限らず、コミュニケーションに問題がある職場は一般に多い。コミュニケーションがわるい職場は、業務の進捗や人間関係にもマイナスの影響が出る。多くの企業で、対話が注目される理由だ。

「同じコミュニケーションでも『対話』と『議論』は違います。誰もが自然にその場の目的に応じて対話と議論を切り替えてコミュニケーションできるようになること――そんな組織づくりに貢献したいです。スコラさんのスキルやノウハウを吸収して、効果的なファシリテーションができるようになることも目標の1つです」(伊藤さん)

PRIDE PJは5年目を迎え、エンゲージメントサーベイなどで成果が認められている。しかし活動は今後もつづくと森さんは語る。
「PRIDE PJは名称にプロジェクトとついているから、いずれ終わりがくる活動だと誤解されがちです。しかし、対話を通して“組織のありたい姿”を描き、みんなでその姿に向かって変化していく、という活動に終わりはありません。会社がある限り、組織開発は常に必要ですし、業績にも直結する取り組みだと考えています。ただし、活動そのものはBUごとに違って一様ではありません。いかなる状況でも柔軟に対応できるのはスコラさんの特徴だと思います」(森さん)
現在までの成果に満足することなく、さらにレベルが高い取り組みへの挑戦はつづく。

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