話が散漫になり傍観者が出てきたら「チェックナウ」でモードをチェンジ

私たちが行なうオフサイトミーティングでは、参加者が腹落ちすることを大切にして、じっくりと対話を進めていきます。 問題・課題など特定のテーマについて話し合うオフサイトミーティングであっても、最初の段階では、まず「〇〇について個々が思っていることを出し合う」発散型の対話を行ないます。

落としどころとしての結論を意識せず、個々が思い思いに話をしていく発散的な話し合いは、参加者にとって発見や気づきも多いものです。しかし、その半面、これがいつまで続いて、どこへ向かうのかがわからなくなって、場が“迷走状態”に陥るということも起こります。また、個々が関心のおもむくままに質問して自由なやりとりをしていると、その筋に乗りきれなくて傍観する人も出てきます。

恥ずかしながら、私もまだコーディネーターとしての経験が浅い頃は「いったい、この場は何をするための場だっけ?」「参加者の温度感が一人ひとりけっこう違うようだけど、いいのかな?」と、戸惑うことがよくありました。
そんな時に役立ったのが「チェックナウ」。今ここがどういう状態なのかをみんなで立ち止まって眺め、場のモードを切り替えるための投げかけです。

質問したり、やりとりをする人も限られてきて、全体として参加者の場への関心や集中が途切れてきたなと感じたら、進行役は「チェックナウ」を試みます。いったん流れを止めて、話し合いの現在地を確認し、散漫になった場の空気を入れ替えるようにします。
具体的には、「今この時点で、どんなことを感じているか、自分はどんな状態か、何でもかまわないので率直に聞かせてください」と投げかけて、一人ひとりに聞いていくのです。

すると、いろいろな声が出てきます。
「こんなことを考えていました」「この場で何を話しているのか、ちょっとわからなくなっていました」「次にこういうことを話したらいいのではないかと思っていました」など、一人ひとりが見ていた景色がみんなにも見えるようになります。
それによって、みんなで現状認識を共有しながら、今の状況を踏まえて、次に何をすればいいのかが考えやすくなるのです。

このように「チェックナウ」の使い方自体はシンプルなものです。一人ひとりのリアルな気持ちや現状認識を、場の全員が一緒に見ていけることで安心できるのも利点です。

進行役にのしかかる、参加者のネガティブな心の声と温度差

ただ、私自身もそうでしたが、「チェックナウ」の有効性がわかっていても、進行役がそれをタイミングよく使いこなせるかというと、実際には簡単ではありません。というのも、行き詰まり感がある中で、モヤモヤした場の空気をかもし出している参加者の内心の声というのは、決してポジティブで受け止めやすいものではないからです。

ただでさえ進行役は、「そもそもここは何をする場だっけ?」「それぞれの受け止め方や認識、思い、温度感はバラバラそうだけど、どうやったら噛み合うんだろう」と、頭の中で混乱しかけている状態にあります。
その上さらに、参加者一人ひとりにありのままの今の気持ちや状態を聞くのは、パンドラの箱を開けるようなもの。ますます混乱度合いが増してしまって対応しきれないかもしれません。

「今、何を話しているのか、まったくわかりません」
「この場の目的はなんなんですか?」
「こういう話し合いには、あまり意味を感じないんですけど」
といった赤裸々な声が出てくることに不安や恐れを感じて、躊躇してしまうのも無理からぬことでしょう。

また一方には、「みんな思っていることはありそうなのに、ものを言わない。思っていることがあるならもっと言えばいいのに」「そもそも、真剣に関わる気がないのではないか」などと、協力的でない参加者の態度や様子に不満を覚えてしまうこともあります。

進行役と参加者の間にもまた、温度差が生じているのです。

そんな時こそ「チェックナウ」をやってみてほしいと、私がおすすめする理由が2つあります。

参加者にとっても場づくりが自分事になる

そもそも対話の場を、参加者同士がオープンに話し合い・考え合う場にしたいと考えているなら、たとえ耳の痛い意見であっても本音で話してもらうことが大切です。参加者のありのままの気持ちや状態が聞けることは、次の展開も含めて「この場をどうするか」をみんなで一緒に考えるチャンスになります。

つまり、進行役は「チェックナウ」で出てきた発言を一人で受け止めて、なんとかしようと考えるのではなく、その場にいるメンバー全員で一緒に考えるようにする。そういうモードをつくるために「チェックナウ」を行なう際には、参加者に向けて「みんなでどうするかを一緒に考えていきましょう」とためらいなく投げかけることがポイントです。

場の心理的安全性が高まる

参加者の今の気持ちを聞くことで「余計に混乱を生じさせてしまうのではないか?」という不安や恐れは、チームの心理的安全性の低さとみることもできます。
「チェックナウ」で参加者がお互いの気持ちを知ることができ、今の場の状態が見えるようになって、さらに1の「一緒に考える」モードができれば、参加者は安心して自分から「次はどうするか」を考えられるようになります。

私の経験でいうと、このような理解で「チェックナウ」を使ってみて、心理的安全性が低くなったことは一度もありません。むしろ、心理的安全性が高まるケースのほうが圧倒的に多いと感じています。

どんよりムードをゲーム感覚で打破する

とはいえ、経験がないと、最初はやはり躊躇するかもしれません。そんな時は、参加者に「今のモヤモヤ度や戸惑い度を1から10のレベルで表すと、どのくらいですか?」と聞いてみるといいでしょう(数字が高いほうが戸惑いレベルが高い)。

聞かれたほうもゲーム感覚で楽しんで答えてくれます。参加者が楽しんでくれていると感じられると、進行役の不安や恐れのハードルも低くなります。
そして、みんなの数字が出揃ったら、数字の高い人から順に「なぜ、そうなのか?」の理由や感情について聞いていくのです。それが見えてくると、みんなでなんとかしようという気持ち、“困ったら助ける”というモードができやすくなります。

そうなりやすいのは、容易に相手の身になって考えることができる、共感力の高い日本人ならではの特性があるのかもしれません。
進行役になったら、ぜひ試してみることをおすすめします。

自分自身が混乱している時にこそ、有効なのが「チェックナウ」です。
進行役にとっては、行き詰まった気まずい空気の中で、みんなは今どんな気持ちでいるのか、何を考えているのか、を聞くことには勇気が要るでしょう。
でも、そこで向き合うことを避けてしまうと、進行役をはじめとする互いの不安や恐れが伝染し、場に充満して心理的安全性が低下するかもしれません。

そんな不安や恐れを乗り越えるためにも、進行役には、一人でなんとかしようと“やり方”を考えて収拾するのではなく、その場にいるメンバーで一緒に考えていこうとする“あり方”が大切です。そういう姿勢で、みんなが腹落ちした状態の当事者になって、次に進んでいくプロセスをつくってみてほしいと思っています。