行政組織における組織風土改革実態調査

実を言うと、今回の調査では「組織風土」については、ほとんど聞くことができませんでした。また、調査票をお送りした後に「組織風土の定義は何ですか?」というお問い合わせもいただきましたが、「組織風土」というものが行政組織でどのように理解されているのかを知るために、敢えて自由に解釈して答えていただくようお願いしました。

組織風土については、「組織のメンバーが共有している思考・行動パターン」といった解釈が一般的です。しかし、組織の風土特徴を知るためには、その組織で働く人たちが自分の組織をどのように見ているか、どのような行動をとっているか、ということを直接お聞きし、そこから特徴を抽出する必要があります。
今回は、首長宛に調査票を送付し、行革推進等の担当部署にご回答いただくという方法でしたので、明示的・表層的に事実として確認できる事について質問することにしました。また、その事実がどこに記載されているのか、首長のマニフェストや総合計画、集中プランなどの当該箇所のコピーを添付していただきました。各自治体のホームページで指定箇所をダウンロードしたものも含まれています。

バウンダリーレスの組織

私どもにとって「自治体を経営する行政組織としての役所」のバウンダリー(境界線)がない(?)ということが、新たな発見でした。示された理念やビジョンは、ほとんどが自治体(地域)のものであり、行政組織(役所)自体のものではなかったのです。「そもそも組織の境界が不明確なところで、組織風土について特定することはできないかもしれない」という思いを持ったのでした。

調査結果からも、行政組織で「改革」といえば職員の「意識改革」に重きが置かれている様子が伺えます。状況が変わり役所の役割も変わっていく中で、「職員の意識を変える、そのための研修や人事制度を導入する」という回答が目立ちました。このような取組みのなかでは、求心力を持たないバウンダリーレスの組織はさまよい、部分の集合となってしまうことはないのでしょうか?
今回の調査結果を詳しくまとめていきながら、次は、公務員の「組織風土観」はどうなっているのかを知りたいと思っています。それがもしかしたら、組織の境界線を見つけ、その中での各部署、各自の役割期待を規定し、そして、自ら何をどう変えなければならいのか、という課題を明確にする手掛かりになるのかもしれません。