0から1を生み出すイノベーションの取組み

少子高齢化、消滅自治体の危機感から、地方創生をめざして、さまざまな自治体でソーシャルイノベーションの動きが出てきました。
公務員の中にも、前例にとらわれず果敢に新しい地域課題の解決に取り組む人が増えてきたように思えます。

これらの動きは、おそらくこれまでも大なり小なりあった動きなのかもしれません。
ただ、2000年以前の機関委任事務時代には「全国一律」の取組みしか認められず、地方が独走することはままなりませんでした。
たとえイノベーションの動きがあったとしても、周りの抵抗勢力に遭って出る杭が打たれるか、異端児が組織からはみ出して孤軍奮闘するしか道がなかったのではないでしょうか。

それが、今では地方分権の流れが加速してきたことで、地域や組織の中で敢えて独自の動きをつくったり、動きを起こしていく人材を外から呼んでくる「地域おこし協力隊」のような支援策も講じられたりするようになりました。

しかし、これらのきっかけで生まれたイノベーションも、本当の意味で地域の力となって根づき、育っていく道筋はできているでしょうか。
首長が代わったから、国の支援がなくなったから、担当職員が異動したから、などの理由で、途絶えてしまわないようにしなければいけません。

0から1を生み出すイノベーションの取組みには、その先に1から10、20に仲間を増やして、実践につなげていくこと、100、200に広げていけるようビジネスモデルにしていくこと、そして、地域に波及し、その他の取組みとつなげていく地域システムの中に位置付けて、自治体をよりよく改善する力に変えていく必要があります。
行政職員と行政組織には、これらのステップをしっかりフォローし、取組みを進化させていくための役割が期待されてくるのです。

現状と次の目標を共有する「自治体改善ステップアップシート」

そこで、自治体改善マネジメント研究会では、これら地方創生するイノベーションの取組みのその後の継続と展開に備えて、行政職員と行政組織に改善マネジメント力を養っていくために、以下のような場面別のアプローチを用意しました。

(1)イノベーションの芽をつぶさないために、多様な主体とともに位置づけを明確にできるよう、地域のめざす姿を明示し、共有しておくこと
(2)地域のめざす姿に向けて、何を優先するのか、戦略を定め、その実現に向けて、経営幹部が組織を越えた連携体制をつくっていくこと
(3)現場発で、事業や施策が見直され続ける経営システムの構築と運営がされていること
(4)職員が相互に助け合い、協力して、仕事のやり方、業務プロセスを創意工夫して改善できること
(5)新しいチャレンジを通じて職員の意欲と能力を高めていくこと

これらは、地域ビジョン編、経営幹部編、管理部門編、職場編、職員編としてそれぞれ5~7つの着眼点を設定し、現状と次の目標を共有しながら進められるよう、「自治体改善ステップアップシート」としてとりまとめました。

今後いろいろな自治体の行政職員とともに、地域に役立つ「いい役所」づくりに向けたステップアップの活用をしてもらえるよう、任意の実践研究グループをこの7月に特定非営利活動法人として認証を受け、再スタートした次第です。
ご関心のある方とともに実践を試みる有志とのネットワークを広げていきたいと思っています。引き続きよろしくお願いいたします。