組織に変化を起こそうとした時に生じる反作用

この本に提示されている「組織変革の地図」は、進むべきステップを示したよくある変革ロードマップとは違い、変革を進めていく過程で誰もが必ず直面する「10の課題」を取り上げ、それらの課題が生じるメカニズムとその対処法、というかたちで示されています。そのとらえ方の根底には、組織に変化を起こそうとした時には、「自然の法則としての反作用が必ず生じる」という考え方があります。
この「反作用」とはいったいどういうことを指すのでしょうか。

ある企業の若手社員の取り組み

ある企業で、若手の社員が日頃から会社に対する問題意識を分かち合っている同期メンバーを中心に人を集め、自主的に会社を変えていこうという話し合いを時間外に始めました。彼らは真剣な議論を重ね、当事者として「会社を変えていこう」という思いを強めていきました。
それにつれて、参加メンバーも増え、いろんな部門の問題点やそれに対する非公式の改善策も検討されるようになりました。

ところが、彼らの熱意の高まりと比例するように、彼らに対する周囲の批判の声も高まってきました。部門というテリトリーを越えて改善策を提案するという組織の暗黙のルール破りに対する批判や、時間外とはいえ部下が趣旨のよくわからない会合に参加していることへの危惧が圧力となって現れてきたのです。また彼らも、周りのそういった反応に適切な配慮をすることなく対決姿勢を強め、逆に自分たちが動きにくくなるような状況を招いてしまったのです。

見えない力による障壁

このように、本人たちは前向きに会社のことを考えていこうとしているにもかかわらず、その活動を押さえ込もうとする「反作用」が期せずして生じることがあります。(本書では、この種の反作用を「改革者と部外者」という課題として取り上げています)
我々プロセスデザイナーも、改革の過程でいろんな反作用にぶつかります。そして、この見えない力による障壁をいかにして回避し、改革の動きを失速させないようにするかに腐心しています。

世の変革活動の多くが行き詰まってしまうのは、変化を起こそうとすると、まるで恒常性のように、組織(システム)が持っている「現状を保とうとする力が強く働く」からだ、と同書では説明しています。
活動を進めている途中で、“強い力で押せば押すほど、より強い力で押し返されているような感覚”に陥る時は、もしかしたら自然に発生している何らかの課題に気がつかないまま、強引に進もうとしているのかもしれません。
そんな“壁にぶつかっている感覚”を持つ改革の当事者の方々に、本書は一つの対処法を示してくれると思っています。