人事異動は変革のチャンス

公共の組織の場合、人事異動が頻繁に行なわれます。変革の核となって熱心に取り組まれていた方が異動になると、その部門の取組みが道半ばで萎んでしまうことも少なくありません。これはとても残念なことですが、人事異動は変革のチャンスにもなりえます。
ある市役所では、異動した先々で、まるでたんぽぽの冠毛のように、新しい職務を通して改革の輪を広げていった方がいました。前の職場で取組んだ経験をもとに、次の職場でも周囲に仲間をつくり、新たな課題に取り組むネットワークをつくっていくことで、組織のあちこちで動きを起こして、繋げていったのです。
新たな部署では、役職についたり外郭団体で責任あるポジションに就くことで、これまではできなかったことが実現できることもあるでしょう。新しい職場でも仲間をつくり、一緒に考え、行動できる環境をつくることで、その職場では以前はできなかったような動きが、異動をきっかけに起きやすくなるのです。

今までの関係性を変えるきっかけ

上司が替わると順番に現場を回って対話することもよくありますが、その機会を利用して、各職場のコミュニケーションを良くすることも可能です。上司が部下の話を聴くことも大事ですが、職場内で職員がお互いの状況をよく知り、何年も同じ職場で働いていても改めてお互いのことを聞いてみると意外な面を発見でき、それをきっかけにして今までの関係性を変えられることもあります。

たとえばある部署では、新たに着任する部長を迎えるにあたって、もっと自分たちのことを知ってもらいたいと、係長が昼食会を設定しました。500円の日替わり弁当を取り寄せ、会費制です。そして、皆でお弁当を食べながら、管理職を含めた課員が部長に対して自己紹介と担当業務の内容について、ざっくばらんに話をしたのです。担当業務と簡単な経歴紹介をする中で、課員同士も初めて聞く話も多く、課内のコミュニケーションがその後格段に良くなったのです。管理職でなくても、昼食を一緒にしながらざっくばらんに話をすることなら、新任の方も、受け入れる方も気軽に声をかけやすいでしょう。

人事異動は、人と人との新たな関わりを生みます。今だからこそできる場づくりを通して、今後の方向性や課題を共有したり、職場のメンバー同士がお互いの状況や仕事の優先順位を確認することができます。これは、チームとしてより高い成果を上げる条件づくりにもつながります。仕事の意味や内容を問い直し、情報の流れや共有の仕方など、自分たちの仕事のあり方をみんなで考える機会を、新任の方も、受け入れる側の方も、この時期にぜひつくってみてください。