会議とは違う「目的とプロセス」で進める話し合い

【観点1】「意思をもって動く」ことが目的

一つ目は、何を話し合いの目的にするかという観点です。
多くの会議は「結論を出す」ことを目的とします。それに対して、オフサイトミーティングには「結論を出すことをノルマにしない」というルールがあるように、「結論を出す」ことが第一目的ではありません。「参加者が同じ方向を向き、意思を持って動き出す」ことが目的なのです。

もちろん、そのためには「何に向かって動くか」の方向性に関する結論は必要でしょう。ただ、明確なビジョンやコンセプト、課題の解決策などの結論がなくとも、それぞれが自分のやりたいと思うことについて「とりあえず動いてみよう」と行動を起こすことができれば、オフサイトミーティングは成功したことになります。

【観点2】「知・情・意」を統合するプロセス

二つ目は、前記の目的を果たすためにはどんなプロセスが必要か、という観点です。
オフサイトミーティングで話し合いを進めていく上では、「知・情・意」の3つの要素を統合していくプロセスをつくっています。

①  知
多くの会議は「知」、つまり合理性や論理性を中心として話を進めようとします。オフサイトミーティングではこれに加えて、参加者の感情や意思が場の中に出てくることを大切にしています。

②  情
通常、合理的に話を進めたい会議や業務ミーティングなどでは、個々がどう感じるか、どんな気分かといった「感情」を積極的に取り扱おうとしません。円滑な進行のためには、非合理でコントロールできない感情は「ジャマなもの」なのです。

しかし、実際に物事を進めようという時には、そこに関わる人々の感情が「成果」に大きく影響する要因になります。
「もうあんな思いはしたくない」「感謝される仕事がしたいんです」など感情には肯定的・否定的な両面がありますが、いずれにしろ、そこにあるエネルギーは強いので、プラスに転換すればエンジンになります。

プラスの感情をもって動いていれば、成功までの試行錯誤の努力もいとわず、自分の意思で続けていくことが可能になります。マイナスの感情があると、それが人間関係のイザコザのもとになり、仕事の進行を止めてしまうかもしれません。協力する気持ちも希薄になるでしょう。

感情は、人が前に進むためのエネルギーです。この観点からオフサイトミーティングでは、話し合いの場で十分に感情を表現して共有し合い、全体の気持ちをプラスのほうに転換していく進め方をしています。

③  意
さらに、メンバーの意思・意図がその場で生まれ、育っていくことが大切です。仮に合理的な議論で「正しい結論」が出たとしても、人々の意思がそこに込められていなければ、物事が何も進まないか、やったとしてもすぐに立ち消えになるでしょう。
そのため、オフサイトミーティングでは「腹に落ちる」という状態になることを大切にしています。「腹に落ちた」時に意思は定まり、動きは主体的なものへと変わります。意味や目的を考えることを大事にするのも同じ理由からです。

もしも場の中に、「合理的ないい意見」が出ているが「感情」や「思い」を述べる発言が出ていない時は、それが出てくるような場づくりをします。逆に「感情」や「思い」ばかりで現実や事実を見ていなかったり、合理性に欠ける主観的な話に傾きすぎている時は「知」の面を強化するようにします。

そうやって人間が持つ「知・情・意」をうまく表出させ、それらを統合していくことによって「腹に落ちる」結論を見出せるようになり、全体として動くことや、正解の見えない試行錯誤を続けられるようになるのです。

「身体知」を駆使する話し合い

「知・情・意」を出やすくするのがオフサイトミーティングの場づくりであり、そのコーディネーターにはこれらをうまくマネージする感性が求められます。

20年前ぐらいだと思いますが、「学習する組織」を提唱したピーター・センゲが「東洋人(日本人)は身体の知恵をうまく活用する民族だ」と言っていたように記憶しています。その通りで、日本語には「胸襟を開いて話す」とか「腹に落ちる」など、身体に関わる知恵を表す言葉がたくさんあります。

スコラ・コンサルトが手がけるオフサイトミーティングは、日本企業の改革の現場で人々のメンタリティや組織の特性を見ながらつくってきたやり方なので、おのずと日本人が自然と使っている身体知にも目を向け、大事にしています。(私たちが体系的に計画しながらやってきていないところも身体感覚なのですが)。

実際、場の中で「腹に落ちた」状態になった時には、そこにいたメンバーがそれぞれの思いで主体的に動き出す、ということが起こります。私などは、その感動を味わうためにオフサイトミーティングをやっているといっても過言ではありません。

これからオフサイトミーティングをやられる方は「頭(思考)」だけでなく、ぜひ「心や身体」を使って、全体性を大事にしながら対話のコーディネートをしていただければと思います。