行政に求められるようになった戦略マネジメント(上)|コラム|スコラ・コンサルト
行政に求められるようになった戦略マネジメント(上)

行政に求められるようになった戦略マネジメント(上)

元吉 由紀子 | 2020.11.26

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行政に求められるようになった戦略マネジメント(上)

行政に馴染みのなかった「戦略」

「戦略」という言葉が、しばらく前から行政の中でも使われるようになりました。しかし、エリア独占している自治体で、すべての人にサービスを提供する行政においては、民間企業のように戦略を意思決定することには困難な側面もあります。戦略策定にはそもそも何のため、何をめざして戦略が必要になっているのか、必要性について理解されていることが重要です。

そして、戦略を推進していくときにも、何を優先するのか、なぜそれが重要なのかの判断基準を定め、しっかり共有しておく必要があります。また、昨今のように劇的に環境が変化する中では、すべてが予定どおりに進むとは限りません。環境の変化をとらえて、取り組む内容を適宜変更することも必要となります。

自治体で戦略を策定し、実行し、修正していくにあたっては、行政においてこれまでよりもより強固な意志を持ち、それでいながら柔軟に対応する姿勢が求められます。

総合計画に戦略を組み入れる動き

自治体において「戦略」が流布されたきっかけとして、2015年に施行された「まち・ひと・しごと創生法」がありました。これに基づき全国の自治体では、人口減少、少子高齢化、東京への一極集中を是正すべく、「人口ビジョン」と「まち・ひと・しごと創​​​生総合戦略」(以下、「総合戦略」という)が策定されました。

総合戦略を策定するにあたっては、重要な施策にKPI(重要業績評価指標)を設定し、PDCAサイクルで目標達成に向けたプロセスを管理することが求められました。また、当初の総合戦略は、既存の総合計画とは別に策定するよう手引きされていましたが、その後の改定にあたっては、総合計画の中に取り入れたり、内容
を合致させたりする動きが出てきています。

私が長く関わっている三重県南伊勢町でも、2019年度に策定された総合計画「新絆プラン」では、基本構想の中に長期の人口動態から町の30年後のめざす姿を設定し、その実現を図るV字回復戦略が設定されました。めざす姿も、単なる人口増ではなく、人口が減っても活力を維持できる『年齢構成のバランス』に着目し、年少人口の回復に的を絞って目標設定されています。

これをともに、基本計画に代わって「戦略計画」も策定されました。戦略計画では、施策ごとの体系を記述する前に、V字回復戦略の柱となるV字回復3戦略プロジェクトを記述しているところに特徴があります。戦略は、子育て・常若教育戦略、業のイノベーション戦略、暮らしやすさ戦略の3つで構成されています。また、施策内には、施策目標に対する貢献度を示すとともに、戦略に直接関わる事業、関連性のある事業、下支えする事業を区別しました。

戦略を推進するために欠かせない横連携

戦略は、策定するだけでは不十分で、確実に実行につなげていく必要があります。それは、重点化した施策に力を結集すればこそ、これまで破れなかった壁(重要課題)を打ち破ることが可能になるからです。

しかし、行政組織内は、部門ごとの縦割り構造となっています。
戦略の推進には部門間の連携が必要となりますが、各事業部門の担当者にとっては、自分の職務を果たすだけで手一杯の状況にあるため、そのままでは戦略の推進も部門ごとに蛸壺化してしまいかねません。これではせっかくの戦略も力が分散され、めざす成果を出しきれずに終わってしまう危険性があります。

そこで、部門を超えて力を合わせるために、組織マネジメントの工夫する必要が出てきます。

さきほどの南伊勢町では、「V字回復課長会議」という横連携のための会議体を設けています。町には部長の職位がないため課長たちが最上位の幹部職員となるメンバーです。通常の課長会議と同じメンバー構成ではありますが、ここでは、戦略ごとにグループを編成し、課を超えたグループ単位で一つの戦略の進行管理(PDCAのマネネジメントサイクル)を行なっています。

例えば、予算の策定時期には、各課で予算化した事業を持ち寄り、今一度戦略視点でとらえ直して、戦略に関わる事業の優先づけを定めています。また、予算確定した後には、実施にあたってどんな連携をしていけばいいのかについて、連携策を検討しています。


課長の横連携をサポートする係長の横断チーム

それでも、課長たちは、それぞれ担当政策の遂行責任を持っているため、単年度の業績結果を出すことに集中しがちで、将来に向けた課題に時間と労力を割くことまでは、なかなか及びにくいところがあるものです。これは、昨今の人事評価制度における業績評価なども影響しているのかもしれません。

そこで、南伊勢町では、管理部門の係長たちによる「政策開発事務局」を組織し、戦略課長グループごとの運営をサポートするとともに、既存の事業の推進とは別に、将来に向けた事業の開発を検討するため、テーマごとに期間限定、部署横断で立ち上げる「戦略プロジェクトチーム」の企画・提案、チームのサポートなどの機能を果たす役割を担うことにしています。

全国一律にすべての政策、施策を遂行する責任を担う自治体で、地域独自の戦略を定め、実行していくことには、かくも大変なことなのだとわかってきます。

次回は、南伊勢町が、戦略の推進力を高めるために新たに実施した行政評価についてお伝えしたいと思います。

著者プロフィール

元吉 由紀子

元吉 由紀子

YUKIKO MOTOYOSHI

生活者起点で時代最適の価値を創造し続ける経営を実現できるよう、トップと現場の有志たちが連携・共振していくプロセスを一緒に築きあげている。

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