トップの宣言と活動準備

SHIグループの「PRIDE PJ」が本格始動したのは、日本全体がコロナ対応に追われていた2020年。グループ報「かるテット」では、20年夏号から組織開発の理解を深めてもらうための連載記事「Change!」がスタートした。社長は、連載の第1回で次のように活動スタートを宣言している。

SHIグループの組織開発活動「PRIDE PJ」をスタートさせます。
「PRIDE PJ」という名称には「誇りを持って働ける職場づくり」という意味を込めました。このPJでは、人や組織の中にもともと存在する「思い」や「力」を引き出すことで、「自律する個人」「挑戦する組織」づくりを行い、事業成長や自己実現を促進していくことを目指します。
このPJの主役は、住友重機械グループに所属する全ての皆さんです。
一人一人が当事者意識を持ち、自らの組織を自ら良くしていこうと考え、行動していただきたいと思っています。そして、私も当事者の一人として皆さんと一緒に活動を進めていきます。

社長の宣言につづき、組織開発について解説するコラムでは、「皆さんの職場でこんなことはありませんか?」と社員に問いかけている。

□ 経営や上司への信頼感が薄い(自ら変わろうとする姿勢が感じられない)
□ 目の前の仕事をこなすことに精いっぱいで、周囲への関心が持てない
□ 仕事そもそもの目的や意味を考えずに、たださばくだけになっている
□ 日常のコミュニケーションが指示・連絡・報告ばかりで相談が少ない
□ 上司の出した答えに従うだけで自分では考えない、意見が言えない
□ 問題を感じても「どうせ言っても無駄」「言ったら自分が損をする」という諦め感がある
□「必ず誰かが助けてくれる」という安心感がない
□ 部署によって優先することが違うために協力できない(部門の壁)
□“三遊間のゴロ”を押し付け合う
□“不都合な事実”は表に出しにくい

このような問いからはじまり、組織開発の意義や効果を説明する内容となっている。

PRIDE PJのゴールは「組織内の当事者が、組織の成長・改善のための取り組みを自ら考え、行動できている状態」になること。人や組織のなかにもともと存在する「思い」や「力」を引き出し、「自律する個人」「挑戦する組織」を実現し、事業成長や自己実現の促進をめざすことが活動の狙いとなっている。

住友重機械工業の人事本部人事戦略部組織開発グループの森麻子さんは、当時の状況を次のように説明する。
「19年から20年にかけては、人的資本経営の話題が聞かれるようになり、組織開発への関心が高まりだした時期です。働き方改革やダイバーシティなど組織のあり方が問われるなか、当グループでは18年に不適切な品質検査が見つかるなど組織の問題が意識されました。会社が持続的に成長していくためには組織が変わらないといけない、という認識はトップをはじめ経営層で共有されていたようです」


森さんがキャリア採用で入社したのは20年1月。過去に百貨店、IT大手、メーカーで人材開発や組織開発に携わった経験から、PRIDE PJ推進の担当者となった。
活動の準備は、前年の19年から進んでいた。10月に本社の人事本部ダイバーシティ推進グループは、「組織開発グループ」に名称変更。従来のダイバーシティに加え、組織開発を推進する部署と位置づけられた。

12月には、当時の人事本部長をはじめ、人事幹部メンバーがスコラ・コンサルトを訪れ、プロセスデザイナー(PD)とともに、2日間にわたって組織開発や展開方法の理解を深めた。初めにスコラ・コンサルトの組織開発についてレクチャーがあり、活動全体のデザイン、事業部門や関係会社の活動を伴走支援する際の方針などを決めていった。

スコラ・コンサルトは、グループ全体の事務局である組織開発グループを支援しつつ、各BUの活動についても、事務局とともに伴走支援することになった。
「スコラさんの特徴は、業務と人・組織を両輪としてよくしていく企業の取り組みという前提があることです。組織開発においては、事業成長と自己実現を促進する取り組みを実現するかが重要だと考えています。その点でスコラさんは、企業活動の現実をしっかりと踏まえたうえで、実践的かつ無理のないアプローチを提供してくださるため、非常に進めやすく、安心して取り組むことができました。」(森さん)